チェーホフ『かもめ』から15年―
動乱の時代に生きる3人の登場人物たちを描く

『ニーナ あるいは剥製のかもめの脆さについて』は、作者マテイ・ヴィスニユックが風のために最初に書き下ろした作品です。レパートリーとなっている『パンダの物語』『戦場のような女』に加え、風での上演のための書き下ろし作品『ジャンヌ・ダルク』(2009年上演)、『年老いたクラウン お前の乳房の上で調教したエスカルゴ』(2009年上演)など、マテイ・ヴィスニユックは風の創造活動にとって欠かせない協働者となっています。風の芸術監督 浅野が劇団員とともに行ってきた、チェーホフ『かもめ』を題材としたワークショップ「ニーナ・ワークショップ」をマテイに見せ、台本を依頼した事がきっかけとなり、この作品が生まれました。

舞台は『かもめ』の終幕から15年が経ったトレープレフの家。
15年前、人気作家トリゴーリンとともにトレープレフのもとを去り、女優を目指してモスクワへと発ったニーナがトレープレフの家を訪れる。
女優への夢と挫折、子どもの死、過ぎ去っていく時間―
トリゴーリンとの愛を回顧するニーナ。2度の自殺を図ったトレープレフ。
やがてニーナを追ってトリゴーリンが現れる。
振り子時計が時を刻むなかで、時の化身となった3人が再び出会うのは、ロシア革命の時代。森に不連続に響く銃声は革命の足音を予感させ、ドアの外には凍った兵士の死体が現れる。15年の時を経て、3人が見い出す“希望”とは……

作:マテイ・ヴィスニユック
訳:谷島貫太
演出:江原早哉香
音楽:八幡茂
舞台美術:高田一郎
 
照明:フランソワ・シャファン
 
衣裳:ズザンナ・ピョントコフスカ