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企画にあたって
浅野佳成〈東京演劇集団風芸術監督・演出〉
マントゥール劇場と東京演劇集団風との共同制作『海との対話』は、フランソワ・シャファンの舞台芸術に対する情熱、その思考、態度が劇団員ひとりひとりの心を動かし、生まれ出た企画、上演だろう。
私たちはフランソワ・シャファンを総合演劇人と呼んでいる。その総合演劇人フランソワとの出会いは2005年、オリビエ・コント演じる『年老いたクラウン』の上演の時だった。フランソワはオリビエ演じる“ニコラ”の演技に、そして舞台空間にひとつひとつに明かりを当ててゆく。オリビエの演技はますます深まり、光り輝いていくのを目の当たりにした。まるで光で舞台に詩が描かれていくような新鮮さを覚えた。日本の照明家とは基本的な発想が全く違ったのだ。オリビエにフランソワのことを聞いてみると、「彼は俳優もやり、演出もやり、脚本も書き、劇団の芸術監督をしている」と言った。そして何よりも彼はアーティストだとオリビエが教えてくれた。
一緒に舞台をつくってみると、おまけに正真正銘の詩人でもあった。それ以後、フランソワと私と劇団の関係はますます深まり、私自身が脚色したカミュの『異邦人』では舞台美術、照明、音楽ダイレクターを引き受けてくれた。2013年に上演したブレヒト作『ダンゼン・鉄はいくらか―豚から生じないすべて……』では新人の演出家、江原早哉香と素晴らしい共同作業でもって風のブレヒトに対する新しい視点を示してくれた。
2011年、例の東北の大震災の年、作家のマテイ・ヴィスニユックから「フランソワとマントゥール劇場がフランスのアヴィニョン演劇祭で、浅野たちにとって重要かつ素晴らしい上演をしている。君はぜひ観に行くべきだ」と連絡があり、すぐにアヴィニョンへ、マントゥール劇場と彼が演じる『プロメテウス・エレクトリック・ポエム』を観に行った。『海との対話』の共同制作が提案されたのはその時だった。私は即座に賛同した。理由は3つある。ひとつは彼の演劇に対する情熱と本質に強い関心を持っていたから。もうひとつは彼の芸術性の高さに劇団の俳優やスタッフが触れることを強く望んだから。そして最後の理由は、いつでも何か悪巧みを考えられる、いい奴であり続ける友人でいたいからだ。
フランソワの来日は『年老いたクラウン』以来、昨年の『ダンゼン・鉄はいくらか ―豚から生じないすべて……』で7回目になる。『海との対話』にとどまらず、フランソワ、そしてマントゥール劇場との交流がますます深く大きな波になっていくことを望み、この共同制作に大いに期待している。
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第84回公演[新作]
東京演劇集団風・マントゥール劇場 共同制作による
2014年8月20日[水]~24日[日]
開演:平日7時/土日2時[全席自由]
人間の心の奥底には、まだ誰にも見せたことのない闇の部分と、語られない言葉がうごめく〈秘密の園〉がある。
そこは、常識や理性の型にはまらない奇想天外な思考や感情が芽吹く場所、あるいは生の源泉かもしれない。
『海との対話』は共に生きることを願う〈秘密の園〉に住む怪物たちの物語。
エレクトリックな光と音の中で、影は踊り、祈りを謳う。
世間の目、慣習、秩序に繰り出す怒号のパンチ!?
不確かで不安定な私たちと世界の存在が12のエピソードとともに浮かび上がっていく。
東京演劇集団風と2005年より協働を重ねるフランソワ・シャファンが率いるマントゥール劇場との共同制作による新作上演。レパートリーシアターKAZEでの上演後は、フランス各地で公演・
ワークショップ・リーディングを行う。
演出をはじめとするスタッフ・キャストを日仏のアーティストが担い、現代劇の新たな可能性の提案を試みる。
第84回公演[新作]
東京演劇集団風・マントゥール劇場 共同制作による
海との対話
ENTRETIENS AVEC LA MER
作:フランソワ・シャファン François Chaffin 翻訳:大野舞
演出:フランソワ・シャファン François Chaffin/江原早哉香
芸術監督:浅野佳成
作曲・音楽制作:バンジャマン・クルシエ Benjamin Coursier
音響:ドゥニ・マラール Denis Malard
照明・衣裳:フランソワ・シャファン François Chaffin
映像:ドゥニ・マラール Denis Malard
舞台美術:佐田剛久 音響オペレーター:渡辺雄亮 照明オペレーター:坂野貢也
グラフィックデザイン:ベルトラン・サンプール Bertrand Sampeur
舞台監督:辻幸男 企画制作:佐藤春江/エロディー・クロ Elodie Couraud
【出演】
辻由美子/坂牧明/柳瀬太一/緒方一則/柴崎美納/西垣耕造
栗山友彦/稲葉礼恵/中村滋/渋谷愛
セリーヌ・リジェ Celine Liger /ジュリアン・ドゥファイ Julien Defaye
セルジュ・バルバガッロ Serge Barbagallo
フランソワ・シャファン François Chaffin
バンジャマン・クルシエ Benjamin Coursier
会場:レパートリーシアターKAZE
2014年8月20日[水]~ 24日[日]
開演:平日 7時/土日 2時[全席自由]
入場料:当日 4000円/前売 3800円/学生 3300円
年間通しチケット:10,000円(3枚綴り)
※レパートリーシアターKAZEで2014年に上演される3作品がご覧いただけます
主催:東京演劇集団風
共催:マントゥール劇場/アンスティチュ・フランセ東京
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)
アンスティチュ・フランセ東京
協賛:
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
認定:公益社団法人企業メセナ協議会