旅公演日記

旅公演日記2006秋

星の王子さま Le Petit Prince

作:サン=テグジュペリ●演出:浅野佳成/関西・関東・東北・甲信越・九州地方

<キャスト>
王子: 白根有子
飛行士: 西垣耕造/緒方一則
ヘビ: 酒井宗親
キツネ: 工藤順子
花: 仲村三千代
星の住人: 栗山友彦
バオバブ 田中賢一

肝っ玉おっ母とその子供たち

作:ベルトルト・ブレヒト●演出:浅野佳成/九州地方

<キャスト>
肝っ玉: 辻由美子
料理人: 柳瀬太一
牧師: 中村滋
イヴェット: 柴崎美納
アイリフ: 佐野準
シュワイツ: 佐藤勇太
カトリン: 稲葉礼恵
徴兵係・書記ほか: 白石圭司
曹長・兵士ほか: 高橋征也(劇団芋屋)

06年「星の王子さま」公演終了。
2007/03/03
1172890668s

一旦帰京した「星の王子さま」旅班は、群馬県から再び大阪、奈良、そして広島では市内の中学校8校の合同公演を行い、12月19日広島県の銀河学院中学校・高校での公演で06年秋の旅公演を終えました。
9月26日から始まった、約3ヵ月の旅公演。途中文化庁公演で九州にも渡り、東北から関東、関西、九州と広範囲に及ぶ公演となりました。

旅班は、帰京してすぐ東京レパートリーシアターKAZEで一般公演を行いました。旅公演も含めて、今年最後となる「星の王子さま」でした。
1987年の創立の翌年から旅公演を続けている風の「星の王子さま」は公演回数1300ステージを超えました。
1943年という終戦が近づくアメリカで、祖国フランスの、そして世界の子どもたちの平和を願ったこの作品には、まだまだ私たちが感じて、触れていける世界があるのだと思います。
私たちが感じたものが、小学生から高校生までの子どもたちにどんなメッセージを残せるのか、、風の「星の王子さま」の旅はまだまだ続きます。


新たな出会いに向かって。
2007/03/03

文化庁の本物の芸術体験事業の九州ツアーも終わり、『星の王子さま』は本州へ戻ります。
今週は岡山・奈良・三重・愛知と移動していきます。旅班の人数は20人から11人に減りましたが、芝居を観る生徒さんたちの笑顔に力をもらい気合充実、僕らの旅は続きます。

愛知県上郷中学校では公演終了後にバックステージワークショップを行いました。
通常は舞台裏を見てもらったり、調光卓で照明を操作してみたりと実際に触って体験してもらうため、少人数で行うのですが今回は全校生徒の前でという事に成りました。
「肝心な事は目に見えない」ではありませんが、演劇を上演するにあたり、舞台裏というものは見えてはいけない部分、そしてあまり見せたくは無い部分ですが、演劇を見た後の舞台の種明かしに生徒さんの表情もキラキラしていました。
そして、有志代表の生徒さんによる「星の王子さま」のワンシーンの再現をしました。事前の打ち合わせのときはやや硬くなっていた生徒さんもいざ本番、真剣に、楽しそうに臨んでいました。
有志の募集をしたときはかなりの人数が集まったと聞きましたが、今回、代表になれたのは10名。そんな彼らを見ていると、自ら興味を持ち積極的に取り組む、それこそが学びの基本であり、われわれ大人はそんな彼らに全力で答える責任があるのだと感じました。

旅はまだまだ続きます。新たな出会いに向かって。


第3週目、最終週。
2007/03/03
1172890572s

文化庁公演の最終週となった第3週目。旅班は長崎県五島市にフェリーで渡り、三井楽小学校、五島海陽高校と公演し、佐世保・中里中学校にて06年度文化庁公演の最終日を迎えました。
旅はまだ関西へと続きますが、一回一回の公演を共につくってくれた、文化庁公演のスタッフとはこの公演が最後となりました。

様々な人が関わって、協力し合い、お互いの力を尽くしてひとつの舞台が出来る。若いメンバーも多かった旅ですが、みんなが作品や上演の意図を理解して生き生きと舞台づくりをしてくれたことがとても印象に残っています。
学校によってはバックステージ・ワークショップも行われました。スタッフみんなの仕事をする姿や声をかけられた印象も、生徒さんたちの心なかに残っていくのではないでしょうか。
学校、生徒さんたち、先生たち、そして劇団、文化庁、たくさんの人たちが協力してつくった舞台が、いつでも子どもたちのためにつくられるものでありたいと思う今秋の「星の王子さま」でした。


肝っ玉ツアー終わる。
2007/01/17
1169017045s

10月8日から始まった『肝っ玉おっ母とその子供たち』の公演も12月21日無事千秋楽を迎えた。52校54ステージ、実に30000人前後の若い観客と向かい合ったツアーであった。
20世紀という時代をしたたかに生き、抗い、斗う精神と行動力に、時代への皮肉も・ユーモアも添えて、多くの刺激的な作品を生んだブレヒトでの芸術鑑賞であった。

気合いが入らないわけはない、しかし、高揚感だけではこの長丁場は続かない。
1日1日、1回1回の公演に、その1回に14人のメンバーが向き合うこと、そしてその場で感じたり、驚いたり、立ち止まったりすることを繰り返すのだ。
客席は毎日違う、初日から楽日まで多くの反響があった。それは私たちの予想していた以上のものであった。
ブレヒトはひょっとしたら、今私たちの目の前にいて、笑ったり、考えたりしているこんな客席を想いつつ、戯曲を書いていたのではなかろうか。
リアルでストレートで、リラックスし、舞台上の出来事を冷静に見つめている。

14人のメンバーはその客席の息づかいを、忘れない。
この時代を生き、人間の未来が人間であると書き記したブレヒトのように。


九州初雪です!
2006/12/19
1166494812s

季節は12月になり、いつの間にか『肝っ玉おっ母とその子供たち』の旅公演も終盤に差し掛かっていました。
一回一回のステージを重ねていく中、出会ってきた生徒達の笑顔や涙、そして舞台を見つめる真剣な顔を見てきました。

公演の後に街を歩いていたとき、突然、店員さん声をかけられました。その店員さんは舞台を見ていた高校生で、少し恥ずかしそうに『面白かった』と僕達に伝えてくれました。人と人の出会いと別れ、そこにはきっと何かが生まれていると思います。
声をかけてくれた学生と舞台を終えてまた出会えたことも含め、舞台を通じて様々なことが起きていると実感しました。舞台を見ていた真剣な眼差しで現代を見つめ、これから生まれてくる人たちを見てくれたらと思います。

残り少なくなってきたステージですが、これから出会う学生たちとどんな肝っ玉が作れるか楽しみです。
あと九州で今年の初雪を見ました!?寒いわけですね。


大負けの歌
2006/12/18
1166410355s

「肝っ玉」は1933年に書かれた作品ですが、その中に描かれている人間性や社会が、現代の状況の中に共感できる事がたくさんあります。
その中で「大負けの歌」から
「さからわないで めだたないで あせらないで 耐え忍ぶの つらくても我慢して 不相応なことはしちゃだめってこと」
私はこの歌を聴いて、学生時代の出来事や社会人になっておこった事など、今まで生きてきた世界や社会に共感しました。
でも、共感するだけでなく、疑問をもち、迷って考えて、そして私は考えて自分の決めた道を歩んでいくのだと感じています。
観客の人たちが、その場その場でどんな事を感じているのかはわかりません。
でも、自分の世界や今の社会を根底から考える視線で見ていってもらいたいです。


「文化庁」公演は中盤の第二週目。
2006/11/28
1164722033s

この週の王子さまの旅は熊本県と佐賀県が舞台です。
このところ、教育現場をめぐる暗いニュースが相次いでいますが、実際各学校を訪れてみると、子供たちも先生方も明るくて元気一杯、ぶつかれば跳ね返ってくる弾力性に満ちていて、劇団員もたくさんの勇気と希望をもらいました。

熊本・山鹿市の三岳小学校では、カーテンコールで子供たちが「世界がひとつになるまで」という歌を歌ってくれました。
手話を交えて懸命に歌う彼らの姿を見て、僕たちはみな舞台上で号泣!してしまったのですが、その体育館中がひとつになった瞬間に、僕は「芸術」とは一体何だろう、と考えました。

手元にある辞書をひいてみます。
「芸術とは、他人と分かち合えるような美的な物体、環境、経験をつくりだす人間の創造活動、あるいはその活動による成果をいう」
あの美しい瞬間はまさに本物の「芸術」的瞬間だったのだと僕は思います。

さまざまな出会いを重ね、さまざまな人たちと「芸術」を分かち合うことで、「世界がひとつになる風景」をひとつひとつ描き出していきたい、と考えた貴重な経験でした。


冬の始まり・・
2006/11/28
1164679269s

11月も終盤にかかり、九州は冬が始まろうとしています。
「肝っ玉」は今週で35ステージを終えました。

ブレヒトの詩の中で私たちへのメッセージ

「殺しあったり、騙し合ったり。いじめたり、もう怯えながら暮らす人などきっと誰もいないと思う」

しかし現代ではどうでしょう?
観客の反応はとても素直でざわめきが起こります。
その瞬間彼ら、彼女らの中に、ブレヒトの言いたかったこととは違う形ではあるのかもしれないが今を生きている彼ら、彼女らなりの感じ方で疑問が生まれ、批判しているのがはっきりわかります。そこには演じるもの、観るものの関係とは少し違った対等な、暖かく、厳しい関係が生まれています。
その関係の中で自分たちが何をしてあげられるのか?自由にものを創ることで何を伝えられるのか。これからも考えていこうと思います。
今、生きている彼らには歴史の出来事だけでなく、目の前で起こっている人間のおもしろさや悲しさ、みじめさなどを伝え、自分というものをもう1度振り返って強く持ってほしい。

確かな手ごたえを感じながら残り約20ステージ、若い観客達とどんな発見をしていくのか、とても充実した毎日を送っています。


2006 本物の舞台芸術体験事業「星の王子さま」。
2006/11/23
1164249066s

関東での公演を終え、11月5日、「星の王子さま」旅班は九州に上陸!
今年も、文化庁 本物の舞台芸術体験事業、学校参加型の公演が始まりました。今回は福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県の4県。13校の小・中・高校での公演です。

通常の公演と違うのは、ラストシーンの歌「僕は行く」を全校生徒が一緒に歌い、消えてしまった王子に呼びかける飛行士の台詞「おーい、おーい、どこへ行ってしまったんだよ」を全校で一緒に呼びかけるということです。
また、星の住人:呑み助、地理学者の役を先生が演じたり、卒業を控えた最上級生などが王子、飛行士と一緒に「僕の旅は続く」の歌を歌います。ブラスバンドがある学校は「僕は行く」を生演奏してくれたりと、学校によって参加の仕方はさまざまです。

「本物を観る機会が本当に少ないんです。ぜひ子供たちに本物に触れさせたい。」
先生たちの言葉を聞くたびに“本物”とは何なのかと考えさせられます。生徒さんたちが歌う姿、ひたむきで真っ直ぐな視線にこちらがどきっとさせられることも多くあります。
“嘘”や“にせもの”がいつもどこかに入り込んでくる日常。一緒につくる一度きりの舞台では、子供たちに向かい合う私たちの姿がいつも“本物”であるようにと思う毎日です。

文化庁公演、第一週目は福岡県・若松中学校、折尾高校、宇美東中学校、次郎丸中学校、田村小学校での公演でした。
★写真は次郎丸中学校の生徒さんとキツネ役の工藤さん。


先生方からのメッセージ
2006/11/22
1164189113s

9月下旬からスタートした『星の王子さま』の旅公演も終半にさしかかりました。前半の旅公演を通して感じたこと、それは『星の王子さま』は、先生方から生徒さんひとりひとりへの大切なメッセージであるということでした。開演前の校長先生や担当の先生言葉が心に残ります。

「昨日の夜もう一度“星の王子さま”を読み返してみました」
「サン=テグジュペリが大戦中に考えたことをぜひ感じとってほしい」
「若かった頃読んで印象的だった言葉をぜひ君達も受け止めてほしい」

1ステージの舞台には様々な人の様々な想いがこめられています。
『星の王子さま』の舞台が先生方からのメッセージとなり、生徒さんひとりひとりの心に響き、想いが交歓される場になれば素敵です。様々な想いを受けとめながら、私たちの公演は終半に向かいます。各校の先生方の素敵な想いに触れられることも、私たちの大きな歓びなのだと思います。

今週は、千葉、群馬、茨城、福島の高校4校での公演でした。
★写真は福島県・新地高校、生徒会のみなさんとの座談会より。


旅の中日を過ぎました。
2006/11/21
1164076226s

10月6日に出発した『肝っ玉』も、先週月曜日に旅中日を迎えました。
掲示板にも連日多くの書き込みをいただいていますが、生徒たちの視線、笑い、沈黙に、確かな手応えを感じる旅が続いています。

『星の王子さま』が、文化庁主催「本物の舞台芸術体験事業」で初めて小学校公演をした時、作品の中に人間のゆがみや、おかしさ、さびしさを、次々と発見していく姿に出会い、驚いたことがありました。そして「子供たちへ」と、絵本の冒頭に書かれた言葉が、決して抽象的な意味ではなく、大人には見えなくなったものやことを、サン-テグジュペリは本当に子供たちの視線で書いたのだと、その意味をあらためて考えさせられました。
今回、舞台上の出来事をリアルに発見していく高校生、中学生たちの視線を前に、ブレヒトの築こうとした新しい舞台と観客との関係の可能性を考えます。
次々と子供を亡くしながら、戦争で商売を続ける肝っ玉に充分に共感しながら、疑問を持ち、また批判を抱く彼ら、彼女たち。その心に何を喚起させていけるのか。少しずつ、冬の近づく九州で、旅の折り返しに立つ『肝っ玉』です。


今週は群馬、山梨、岩手の3県で3ステージです。
2006/11/18
1163859148s

23日月曜日は中之条高校での公演。風の月夜野 演劇工房から中之条が近いということで、前日はアトリエに泊まり、温泉にゆっくり入って公演に備えました。終演後たくさんの生徒がバラシを手伝ってくれ、月夜野の話題で盛り上がりました。芝居もみんな真剣に見てくれました。
24日都留高校は3階建ての立派な体育館での公演。前夜から道具の搬入をしましたが、先生方も遅くまで一緒に搬入を手伝っていただきました。生徒たちも元気があって、芝居もよく笑ったり、王子と飛行士のやりとりにとても反応していました。
25日滝沢南中学校は、公演を学校全体で盛り上げてくれました。先生方や、PTAの方も積極的に協力してくれて、カーテンコールでは全校で「イーハトーヴの風」を歌ってくれました。
僕たちは、旅公演では、芝居をして、座談会やバラシで生徒達と触れ合うことは多くありますが、生徒みんなで歌を歌ってくれたことは、僕にとっても初めての経験でした。KAZEのメンバーにとって、素晴らしい思い出になりました。

★写真は、滝沢南中学校座談会。「イーハトーヴの風」の楽譜もらいました^^


町から町へ
2006/11/14
1163469820s

「肝っ玉~」班の五週目は宮崎北高校から始まり、芦北高校(熊本)、久留米学園(福岡)、東海大学付属第五高校(福岡)、大分豊府高校と駆け抜けました!

掲示板でわかる通り、本当に多くの反響をもらい嬉しい限りです。
そこで思うのは、この芝居が彼らの記憶にどう残っていくのかということ。
今の興奮がさめた五年後、十年後でも彼らの中でこの芝居が思い出される瞬間があるとしたら、それは最高の瞬間でしょう。その時にまた「肝っ玉~」に対する新しい発見があるのかもしれない。
なにより風は自由な発想で演劇を創り続けていくことが、彼らにとって大きなエールになるのだと思います。
九州も寒くなってきましたが、体調に気をつけつつ皆で頑張っていきます!


九州はまだまだあつい・・・
2006/11/11
1163230136s

今週で初日より4週間、21ステージを終えました。
今週は福岡と宮崎で二校ずつ公演しましたが、本当に暑い。
毎日、汗だくになりながら舞台を組み立てて、
さらに本番も汗だく、その後の片付けも汗だく。
そして観ている生徒たちも汗だく・・・
でも暑さに負けず、どの学校もしっかりと芝居を見てました。
毎回、カーテンコールの時の拍手はびっくりします。
とても大きく、温かい拍手。
舞台を片付けているとき質問してくる生徒たちの表情は、
今日この日、出会えた舞台、出会えた何かを
本当に楽しく思っている笑顔でいっぱいでした。
これから九州も徐々に寒くなっていくのでしょうが、
来週もアツい舞台をみんなと一緒に作っていきたいと思います。


今週は一週間7ステージと走り抜けた週でした。
2006/11/10
1163089977s

筑紫女学園中学・高校から始まり、新宮中学校、長崎北陽台高校、長崎女子商業高校、長崎明誠高校、宮崎大学教育文化学部附属中学校と公演しました。
当たり前のことですが、各学校全く違った反応、空間なので1回1回ホントに別物の肝っ玉が生まれていることをビシビシと感じます。
ある学校の仕込み中、体育館に組まれた装置を覗きに来た生徒さんの、「すげぇ!オモシロそう。」という声を聞くと、おっ。新しい出会いが始まったと感じます。
これも仕込み中、生徒同士の会話で、「映画なん?劇団なん?劇団!?やったー!」というのをききました。
映画より演劇を観る方が生徒たちはワクワクするんだなぁ。と思いこっちもワクワクします。
芝居を観終わった後の生徒の反響もありがたいことに、多く寄せられています。
肝っ玉の作品の持つただの反戦芝居ではない、様々なメッセージや人間を感じているんだと思います。
肝っ玉の旅も三週目を終え、だいぶペースをつかんできました。
これからも肝っ玉おっ母は九州各地を休むことなく旅していきます。


2週目に入りました。
2006/11/10
1163089868s

「肝っ玉おっ母とその子供たち~あとから生まれてくる人たちに」の旅公演は二週間目に入りました。
風の代表作ではあるけれど、学校公演としては初の今回の旅。
私たち一人一人が伝えたいことが全体として10代の人たちにどう受け入れられていくのか。
今週は中津商業高校(大分)、神埼中学校(佐賀)、伊集院高校(鹿児島)、日南農林高校(宮崎)、宮崎工業高校(宮崎)での公演がありました。
公演後に大勢の生徒さんが楽屋を訪ねて来てくれたり、
ホームページにはたくさんの感想をいただいています。
担当の先生方からもこんな声が…。
「とても難しい作品だと思っていたので、正直言うと生徒にわかるかどうか心配でした。でも、観終わった生徒たちから様々な感想を聞いて驚いています。もしかしたら、大人よりも自由な感性を持っているのかもしれませんね。」
「生徒が見入っていて、舞台の世界に行ったきり帰ってこないという感じでした。」
ブレヒトは1938年作の「のちの時代のひとびとに」という詩の中で、混乱の時代に生きながらくり返し言っています。
「こうしてぼくの時がながれた ぼくにあたえられた時、地上の時」
肝っ玉おっ母たちは戦争の時代に生まれ、子供たちは若い命をおとしていきますが、人はどんな時代に、境遇に生まれようと一度しか生きられない。
あたえられた時の中で誰もが、生きる喜びや幸福を探すのではないでしょうか。
そして、今という時があたえられ、生まれてきた若い人たちにとっても、この時代の生きにくさがあると思います。
10代の人たちとどうつながれるのだろう、という緊張感を持ちながら一日一日の出会いを大切にしてつくっていきたいです。


星の王子さまの第4週目。
2006/10/28
1162002572s

旅公演が始まり第4週目。
移動中のバスから外の景色を眺めると、木々の葉が色付き始めている事に気付きました。もう季節は秋なのですね。
さて今週は黒羽高校(栃木)、万代高校、新潟中央高校(新潟)、湯沢北高校(秋田)での公演でした。新潟県での2公演では、芸術監督の浅野が今旅で初めて合流し、「一回一回違う客席と共に芝居を作り上げる」という事を旅班に伝えていきました。

公演後に行われる座談会や搬出作業の手伝いの中で、演劇部の皆さんの、演劇に対する熱意や意欲をひしひしと感じる事が出来る週であったようにも思います。
「あのシーンはどうやっているのですか?」
「どうやったら声が通る様になりますか?」
「あの音はどうやって出しているのですか?」
など、多くの質問を投げかけられました。我々は一つ一つ答えていくのですが、一向に質問が止む事はありません。

自分達の力にしたい、新しい何かを見付けたい。
そんな純粋な、貪欲なエネルギーを肌で感じた我々は、またそれを新たな糧として、これから出会う客席と向かい合いたいと思います。

★写真は、黒羽高校での公演後、舞台のことや、照明・音響のことなど質問する生徒さんたち。


「肝っ玉おっ母とそその子供たち」九州ツアー、いよいよ始まる。
2006/10/28
1162001677s

「風」の代表的レパートリーのひとつである「肝っ玉おっ母とその子供たち」のツアーが、いよいよ始まりました。
 10月8日の宮崎定時制・通信制高校の合同公演が、その初日となりました。
これから12月21日まで54ステージのツアーです。
今回,「肝っ玉」には,「あとから生まれてくる人たちに」と、サブタイトルを付けました。
ラストには,ブレヒト作のこの詩を群読しています。
「肝っ玉」は,中学校や高校の芸術鑑賞会での作品として上演してみたいと,5年ほど前から企画していた舞台でした。
「肝っ玉」を若い観客の彼ら彼女らが見て,批評し,そして笑う。
そのことの中に,劇場という場(体育館であれ,ホールであれ)での新しい対話が生まれてくる可能性を発見できるのではないでしょうか。
「泣けたけどすっごく楽しかった!」という彼らの言葉が多くのことを物語っているように思えます。
慎重に,そして大胆にスタートした「肝っ玉」のツアーですが,少しずつ手応えを感じはじめています。
長いツアーが始まったばかりですが,記念すべき船出は,悦びと期待に満ち溢れています。
※詳しくは,掲示板,ブログをご覧ください。


西日本から東日本へと横断して、
2006/10/16
1160978106s

 10月8日より旅班は東北に入りました。
 9日、4月より合併した由利本荘市、西目公民館〈シーガル〉での自主事業・一般公演が行われました。幼稚園児生からご年配の方まで見て頂き「シンプルな舞台なのにわかりやすく、たくさんのことを考えさせられました」と、だんだん芝居に入り込んで参加(?)してくる子どもたちに、大人の方たちもびっくり。地元である私自身にとっても記念に残る公演となりました。
 翌日も西目高校での公演を経て、福島は郡山へ。そして首都高をまたにかけ山梨、そして茨城へと、中学、高校での公演が続きます。

 生きてきた時間、場所も違う客席。じっと見つめるまなざし、楽しそうなまなざし、静かなまなざし。その一回、一回の客席のまなざしは違います。
体育館公演では多くの生徒さんが後片づけに手伝ってくれ、その交流の中でも、その日の舞台がどうだったのか感触が伝わってきます。
 十代の彼ら、彼女たちの中に、2時間弱の舞台からどんな”裂け目”が生まれてくるのか思いめぐらせながら、次の公演地に向かいます。

★写真は、HP掲示板にも書きこみをもらった、福島県・郡山第7中学校の生徒さんと。 


第2週目は。
2006/10/09
1160394897s

大型台風接近のニュースに、天気予報をにらみながらの日々でしたが、幸いにも心配していた程の大雨や強風には見舞われず無事に公演を終える事ができました。
先週に引き続き2F体育館での公演もありました。
こちらも終演後の撤去を小雨が降りしきる中、たくさんの生徒さんたちが積極的に参加してくれました。
生徒さんや先生方のパワーにはいつもおどろかされます。
そこにいる生徒さん一人一人が自分の意志と態度をしっかり持って観劇しているということが、とても強く印象に残りました。
『星の王子さま』の旅はまだまだ始まったばかりです。

写真は、雨の中、撤去作業を手伝ってくれる生徒さんたち。


2006年秋の巡演公演『星の王子さま』。
2006/10/01
1159663652s

今年も怒涛の夏が過ぎ、風はふたたび旅公演のシーズンに入りました。
風のロングラン作品となる『星の王子さま』。旅班は9月24日レパートリーシアターKAZEを出発して、初日を迎える奈良県へ。

今回、ほぼ劇団員全員で取りくむことが出来た夏の稽古場を振り返りながら、そこで考えたこと、つくったもの――役者、舞台、作品。その背後に映し出されるものは何なのか。ということを、心に刻み付けて向かう秋の旅です。
今週は奈良県で初日を迎え、富山県、岐阜県にて公演を行ないました。

9月27日の魚津工業高校の公演では初の座談会も行なわれ、「普段舞台に触れることが少ないので印象が強かった。今回の舞台を観て“演劇”というものに興味が持てました。」という生徒さんの感想を頂きました。
巡演する舞台、そして舞台をつくる人の姿は、彼らの日常に少し違った風を吹き込んでいけるのかもしれません。

いつでも一回一回の舞台に全力で向かえるような旅を、つくっていきたいと思っています。

★写真は魚津工業高校。座談会を行なった生徒会の皆さんと!