旅公演日記
旅公演日記2004春
星の王子さま Le Petit Prince
作:サン=テグジュペリ●演出:浅野佳成/関東・関西・中国・四国地方ほか
<キャスト> | |
---|---|
王子: | 東珠実 |
飛行士: | 緒方一則 |
ヘビ: | 酒井宗親 |
キツネ: | 工藤順子 |
花: | 仲村三千代 |
星の住人たち: | 加藤泰斗 |
ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち~
作:松兼 功●演出:浅野佳成/九州・東北・関西地方
<キャスト> | |
---|---|
ヘレン・ケラー: | 白根有子 |
アニー・サリバン: | 柴崎美納 |
アーサー・ケラー: | 酒井宗親 |
坂牧 明 | |
ケート・ケラー: | 斎藤清美 |
アナグノス: | 柳瀬太一 |
ジェイムス・ケラー: | 栗山友彦 |
ビニー: | 清水菜穂子 |
パーシー: | 稲葉礼恵 |
★5月の下旬から始まった『星の王子さま』の公演は、今日兵庫県姫路市にて、千秋楽を迎えました。
姫路西高校のみなさんとは、3年前にも『Touch~孤独から愛へ』の舞台を観ていただき、私たちにとってもまたお会いできたことが大変うれしかったです。この日は父兄の方々にもたくさん見に来ていただき、夏休み前のこの時間を一緒に過ごしてくださったのが印象的な公演でした。終演後も演劇部の元気な生徒さんと校長先生、顧問の先生との座談会ではみんな楽しそうな雰囲気の中で、あっという間に時間が過ぎましたね。ありがとうございました。
座談会といえば一昨日の名古屋学院高校の生徒たちとのことも思い出されます。ラグビー部、相撲部? 陸上部そして演劇部の男子生徒たちがたくさん集まってくれました。みんな客席の最前列に陣取っていたんですね。男子校での『星の王子さま』の上演は私たちにとっても刺激的でした。じっと舞台を見てくれた男の子たち、君たちの視線の先が見つめようとしているものを、僕たちも身体に感じていった時間でした。
昨日は大阪・芥川高校。終演後に行われたバックステージ・ワークショップでは、芝居のワンシーンをいろんな役割を分担して、息を一つにして取り組んだ感動はすてきでしたよ。これから文化祭でのクラス演劇に向けてガンバってくださいね。一つのことに向かって友達同士が協力して造りあげる歓びは、自分にとっての大切な何かを心のなかに残してくれることと思います。成功を祈っています。
(写真は芥川高校ワークショップ。俳優も参加して舞台、音響、照明にわかれ〈砂嵐〉のシーンをつくる生徒のみなさんです)
★『星の王子さま』の公演は10月からまた始まります。今回みなさんとつくり出した、一回一回の出会いを胸に、新しい旅公演の出発の日を楽しみにしています。
『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』の旅は、7月15日三重県のセントヨゼフ女子学園での公演で、夏の公演の千秋楽を迎えました。
セントヨゼフ女子学園は、中学校と高校の合同の観劇。キャパシティ1800人の大きな会館に約1000人の生徒さんが入りました。時々客席から聞こえてくる声に耳をすましながら、私たちが日々何を見、何を感じているかが問われる公演の場で、生徒さんにとって発見の場になればと思っての公演。皆さんどのように感じてくれたでしょうか。
公演後行なわれた座談会は演劇部の生徒さんたちと。「舞台に立つ」ということをお互いに共有しながら、スタッフ、役者、演出がどうかかわりあってひとつの芝居をつくっていくのか、「何を創りたいのか」という想いを共有して、もっと自由に芝居をつくっていきたいという話をしました。早速演劇部の部長さんからは“掲示板”に書き込みいただいています!
今回の公演で、生徒さん・先生たちとの交流、そして夏の暑さも経験し、夏の旅公演は千秋楽を迎えました。この旅日記に綴ったように、それぞれたくさんの出会いの経験を経て、そして『星の王子さま』旅班の帰りを待って、私たちは東京・レパートリーシアターKAZEでの『ハムレット』公演に向かいます。
公演をつくってくださった先生方、そして生徒さんたちありがとうございました!!
7 月7日、大阪府・門真市民文化会館で聖母女学院中学・高校の公演を行なった。開演前に、今回の行事を企画した先生の話があった。「私は1年前にこの舞台を観に行きました。ヘレン・ケラーと周りの人々との心の響き合いに感動し、ぜひうちの学校の生徒たちとも一緒にこの芝居を観たいと思っていました。今日は奇しくも七夕です。・・・」先生の言葉に生徒たちの関心がこれから始まる芝居へと向けられた。その空気を感じてこちらも少々緊張しながら、開演。
公演後に先生がまた生徒たちに想いを語られた。「私が昨年この舞台を観に行った時に、休憩中にたまたま演出の浅野さんとお話する機会がありました。浅野さんは、芝居というのはどんなに良い作品を創っても、客席との間で通い合うものがなければ意味がないのです。それが生の舞台の難しいところなのだと話しておられました。今日舞台から受け取ったことは1人1人違うかもしれませんが、それぞれ感じたことを大切にして下さい。」
今日の公演には約1ヶ月ぶりにちょうど演出の浅野が見に来ていた。これもまた七夕効果かな?「あと2ステージ、最後までしっかりやってくるように」との言葉に改めて気合が入る。
次の日は同じ大阪府の磯島高校と枚方なぎさ高校の公演。元気な客席だった。芝居を見ながらコメントする生徒たちの声が舞台にも聞こえてくる。反応の速さと率直な意見に感心させられたりドキッとさせられたり・・・。公演後の座談会では演劇部の生徒たちから、今演技で悩んでいることなどの質問があり、演劇部出身の白根が当時の自分の経験に基づいてこたえたりした。また柴崎が「人のキャラクターをつくることがなぜ大事だと思うのか?」と問いかけ、考えを話し合ったということを移動のバスの中で聞いた。
芝居でも舞台と客席の間に、お互いの生きている中での経験が交わされ、考える場を創り出せたら面白いと思う。
九州から一転、東北に入って2週目。1日休んで28日は、岩手県の花巻市文化会館での公演、花巻南高校。
じっと静かに芝居を見つめる生徒たちの視線は、アニーとヘレンに注がれている。
終演後、バラシ(舞台の撤去)をしている時、「僕たちにも手伝わせてください」と舞台に上がってきた2人の生徒たち(名前を聞きそびれてしまってゴメン)の姿が印象的だった。
29日、秋田県合川高校は、体育館での公演。
九州に比べれば東北は少しは涼しいだろうという淡い期待もむなしく、体育館の中は40℃を越えたのではないだろうか。そんな中、生徒たち以上に先生たちも大いに盛り上がった。「生徒たちだけでなく、私たちも励まされました」とは、体育館の片付けの最中にわざわざあいさつに来られた校長先生のことば。
30日は、同じく秋田県矢島高校での公演。ここも会場は、体育館。「ここは秋田県の中で一番暑いんです」という担当の先生のことばに思わず冷や汗が流れる。
終演後に「サリバン先生みたいな人がもっと沢山いればいいのに」と語った生徒のことばが深く心に残った。
1日おいて7月2日、山形県綾南中学校体育館での弾力のある中学生たちとの公演を終えて、旅班は一度東京へ。
来週からは再び関西へ―。
★写真は29日秋田県合川高校座談会後、生徒さん、校長先生とアニー役・柴崎美納、ヘレン役・白根有子。
九州公演を終えて約1000キロの日本縦断。ヘレン・ケラー旅班は東北公演へ。「東北といえども」なのか、「東北だからこそ」なのか…、まだまだ暑い体育館。東北公演の最初は、岩手県にある紫波第三中学校・第二中学校、そして翌日、紫波第一中学校での公演。
公演では、演じている瞬間瞬間に生徒さんたちの雰囲気、声、見ている視線など様々なものが感じられます。座談会でよく話されることですが、「その日一回きりの公演を客席とともにどうつくれるか」ということは、生徒さんひとり1人が舞台から何を見て、何を感じているかで変わってくるものです。紫波町での公演ももちろんそんな公演のひとつ。客席からは芝居が進行していくにつれ生徒さんたちの噂話が聞こえてきました。客席を覗くと、まだ小学校を卒業したばかりの中学一年生の小さな頭が、芝居と一緒に動いているのが見え、舞台の俳優も客席の反応を楽しみました。
翌日旅班は大東町にある大原商業高校へ。生徒数約160名の大原商業高校では、公演後に座談会が行なわれました。人と人との関係のこと、私たち自身これからどんな展望と、課題を持って俳優として生きていきたいかなどの話は、社会に出て行くことを目前にしている高校生の彼らに、たくさんの通じる部分があったようです。皆さんが自分なりに話をする姿勢、聞く姿勢に、たくさん学ばされました。
藤沢町へ移動し、藤沢町文化交流センター「縄文ホール」で藤沢中学校・高校の公演。そして午後には会館主催の一般公演を行ないました。午前中の公演では、公演後何人かの生徒さんが客席に残って待っていてくれました。藤沢町の縄文祭りにずっと参加しているという男子生徒さん始め、数人の生徒さんが芝居の感想や、自分達がこれまで関わってきた地域の演劇、そして学校での演劇について話を聞かせてくれました。(写真は、公演が終わった舞台で藤沢高校の生徒さんたちと)
それぞれの状況の中で芝居を観ている生徒さんたちとの出会いを経験しながら、旅はまだ続きます。旅班は、宮沢賢治のふるさと花巻市へ向かいます。
7月5日(月)釜石商業高校。今旅、最後の体育館公演。東北でも生徒数は減ってはきているものの鑑賞行事は続けていこうという学校の取り組みがあるなか、この学校も3年に1回の行事です。屈託のないのびのびとした客席。後片付けには全体で男子生徒数30人全員が手伝ってくれました。「今日は男子生徒がとてもたくましく見える。かっこいい!」と担当の西村先生。最後までありがとうございました。お疲れさまでした。
8日(木)は桐蔭学園中学1年生の公演。旅も後半になり、わたしたちは客席とどう向おうとしているのか再びそれぞれの中で問い返せれ、また気合いも入る。そんなことはかまわず、生徒たちは開放的で圧倒されるくらい屈託がない。彼らから感じたこのパワーをしっかりと受けとめ、次の公演へと向かう。
東北公演1日目は岩手県立大野高校。素直にまなざしを向け、明るく感想と質問を投げかけてくれる生徒たちを「そう、うちの生徒は本当に仲が良くて一生懸命な、すてきな子たちなんです」と顔をほころばせて語る校長先生、生徒の笑顔を支えている先生方の姿をかいま見させてくれました。
北上市、久慈市の講演を終え、『星の王子さま』は宮城県へーーーーー。(写真は久慈工業高校で)
7月2日(金)宮城県第三女子高校公演。80周年記念行事として伝統的に行われている校内合唱コンクールと芸術鑑賞行事が行われる。合唱コンクールは午前中にあるので前日のうちに準備をする。舞台を使って合唱コンクールが行われることはよくある。クラスごと工夫や思考を凝らして、とてもエネルギッシュな舞台でした。
この春の一般公演は群馬県の新田町文化会館エアリスホール。町のためにどのような舞台公演のプロデュースが必要なのか、主催者側が時間をかけて企画し、造られてきた公演です。久しぶりの小さな子どもたちの歓声と感性に(!)どきどき…
同じく東北地方を公演中のヘレン・ケラーの旅班のメンバーも見に来てくれて、にぎやかな公演となりました。
一度東京に戻り、この後旅班は関東から北上してゆきます。6月15日(火)晴天!!西那須野中学校体育館での公演でした。朝から気温は上昇してゆくなか、本番には少しでも風が入ればと、窓をかなり開けてはみたものの、なかなか風は入らず……。でも最後まで客席の熱いまなざしで、舞台と客席汗たっぷりの公演でした。16日(水)は、清瀬東高校。公演後、座談会に出席する前にぜひ王子さまに会いたいと、3人の生徒さんが先生とともに楽屋を訪ねてきました。「生徒たちのこんなに真剣なまなざし、姿は見たことがない」と帰り際に挨拶をかわした先生たちの言葉。鑑賞行事は先生たちが生徒さんと出会っていくとても大事な時間でもあると実感しています。
関東での公演が続き北上して18日(金)福島・富岡高校体育館での公演には、青木校長先生の意向でぜひ見せてあげたいと川内分校60人の生徒さんたちと合同で行われました。体育館での舞台空間に驚きと興味を示す校長先生。本番は出張のためご覧いただけず残念でした。後片付けには、最後まで手伝っていただき本当にありがとうございました。
再び東京に戻り24日(木)は桐朋女子中学校2年生の公演。昨年彼女たちが1年生の時に、〈『星の王子さま』を読む〉授業があり、王子さま役の東珠実が講師として授業に関わりました。あれから時間が経過して読んだ時とは違う印象を持ったひと、違う出会いがあったひと、去年のことがよみがえってきたひと好奇心溢れる客席、様々な思いがいっぱい詰まっていたように感じられました。大変お世話になりました。
この後は北へ北へと岩手は九戸まで向かいます!
川内南高校では、公演後たくさんの生徒さんが集まっての座談会が行なわれました。また撤去作業には、柔道部の生徒さんはじめ、こちらもたくさんのお手伝いをいただきました。ありがとうございました。
“おまけ”の写真は川内南中学校座談会より。
京都公演を終えた旅は神戸港からフェリーで小倉に到着し、そのまま鹿児島県・川内市へ向かう。川内市には昨年秋も何度か逗留し、ステキな喫茶店を発見したので、到着早々コーヒーブレイク&爽やかな夜風を楽しみながら、川沿いの散歩を愉しむ。
1日のオフを挟んで2日間の川内公演は、れいめい中学・高校と川内南中学校。両日ともに晴天の体育館公演。さすがに客席も舞台も汗いっぱいの公演だったけれど、終演後には生徒たちと一緒に撤去をしてすっかり盛り上がりました。体育館での公演は、暑かったり、寒かったり、雨が降っていたりと様々な条件に左右されることが多いだけに、公演後、独特の連帯感のなかで生徒たちと過ごす時間は、大きな楽しみのひとつです。
鹿児島を発ち、次は佐賀県到遠館中学・高校。観劇していたお母さんが参加しての座談会では、微妙な年頃の子供との接点を探る親としての言葉が、印象的でした。
そして今週最後の大分東高校。「ヘレン・ケラーってユリ・ゲラーと違うの?」と、公演前、楽屋に借りた教室の窓越しに興味半分、冷やかしに来る生徒と談笑。人権教育の一環として行なわれた演劇鑑賞の時間のなかで、人が生きることを、様々に感じ、考えてくれるといいなと願って、今日も本番スタート。
来週は、いったん東京に戻り、東北公演に向かいます。
★写真は九州公演初日、公演後の撤去を手伝ってくれたれいめい高校の生徒さんと。
『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』2004年春のツアーは、大阪府枚方市にある招提中学校体育館にて、6月9日初日を迎えました。6月の大阪は想像以上の熱さ。この後、四国・九州、7月に入って東北へと公演を続ける私たちにとっては、「これからの戦いが楽しみ」と、今年も“熱い”公演になりそうな予感。
6月10日は会館公演の初日となった香川県多度津工業高校の公演。終演後、新聞部の生徒さんのインタビューがありました。俳優になったきっかけや、劇団のことなど話しながら、最後のインタビューは、「生徒たちへのメッセージを」ということでした。日々の芝居を抱えながら、私たちも直面している“現代”。そのなかにある「本当のこと」を見つけてほしい。それは難しいことだけれど価値がある。とても生きにくい道だけれど、喜びがあると思います。と話すと、彼は自分の学校生活や、参加している地域の祭りなどの経験から熱心に話に耳を傾けていました。翌日、岡山県の妹尾中学校でも公演後座談会があり、10名ほどの生徒さんが集まって話しました。また体育館では雨の中、バスケット部、バレー部、卓球部などたくさんの生徒さんが撤去作業を手伝ってくれました。皆さん本当にありがとうございました。(さっそくKAZEホームページの掲示板にも書き込みいただきました!)
そして週末、京都府・東部文化会館で行なわれた一般公演も、たくさんの方にご来場いただきました。旅初日から旅班に同行していた芸術監督の浅野は、東京レパートリーシアターKAZEでの公演とともに、上演を繰り返してきた学校公演にブレヒトの「叙事的なもの」の芽は出てきているのではないか。その構造はちょっとしたことで壊れてしまうので、構造を見失わないように。と、言葉を残し東京へ戻りました。
旅はまだまだ始まったばかり。旅班は九州へ向かいます。
★写真は、6月11日公演妹尾中学校座談会で。
2004年春のツアーをスタートさせた。
初日は四国松山。歴史のある私立の松山東雲学園。
終演後、先生がた5~6人、そして生徒との座談会は「戦争」を巡って印象深いものとなった。
「サン・テグジュぺリの時代は、大人が戦争に向かっていき、子どもが平和を願っていたのか(だから王子様を描いたのか)」という生徒に、それまでだまって聞いていた年輩の先生が口を開く。
「僕は17の年まで、ずっと戦争の中で生きてきた。戦争は常識で、平和なんて考えたこともなかった。それは教育の力です。君がいったように子どもは平和を願っていた、そのことすらなかった時代だということを、覚えておいてほしい」。
生徒はジッと耳を傾けていた。
体験を語り、そのことを受け止めたいと動いた場だったと思う。
戦争は翌日の公演(岡山県長船中学)でも語られた。
未経験なモノが、ひたひたと押し寄せてく触を、10代の生徒も感じて、言葉にしてくれるいる。
「この物語の素敵なところは、解る、ことがないということ。だから考える。作者はずっと前に亡くなったのに、時間を飛び越えて今の私に考えさせる。そこが不思議で、素敵で、大切にしたいなと思った」。
まだまだ始まったばかり。
風の旅は続く。