旅公演日記

旅公演日記2004秋

星の王子さま Le Petit Prince

作:サン=テグジュペリ●演出:浅野佳成/関東・関西・中国・四国地方ほか

<キャスト>
王子: 東珠実
飛行士: 緒方一則
ヘビ: 栗山友彦
キツネ: 工藤順子
花: 仲村三千代
星の住人たち: 久保雅信

ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち~

作:松兼 功●演出:浅野佳成/九州地方

<キャスト>
ヘレン・ケラー: 白根有子
アニー・サリバン: 柴崎美納
アーサー・ケラー: 酒井宗親
ケート・ケラー: 斎藤清美
アナグノス: 柳瀬太一
ジェイムス・ケラー: 加藤泰斗
ビニー: 清水菜穂子
パーシー: 稲葉礼恵

想い出の行方
2005/03/11
1110527003s

3週間にわたる『星の王子さま』文化庁公演も、尼崎市立常光寺小学校で千秋楽を迎えました。
尼崎市の中心部にありながら、全校生徒130人弱、来年度いっぱいで統合される小学校です。

時代と人間への怜悧な観察をもってサンテクスが書き上げた『星の王子さま』。
この叙事的な物語を、時間と空間を越えて今の日本の子どもたちが受け入れ、ともに笑い、「おもしろかった」というのはなぜなのか。
時代のひずみは必ず社会的弱者、つまり子供たちに現れるものですが、子供から教えられる「今」に、私たちはさらに目を向けていくべきではないかと感じます。
そのうえでサンテクスという時代の観察者に触れた思い出が、人生という砂漠の中の一輪の花、一杯の水であってくれればと願います。
想い出は(たとえ忘れてしまいたいことだとしても)人が歩き出す時の支えとなってくれると思うので・・・・。

最後に、この公演を支えてくださった多くの方々に感謝いたします。
ありがとうございました。


先生の参加!
2005/03/11
1110523809s

先生方も、生徒に負けては入られません。
王子さまが星めぐりをする場面で、星の住人「呑み助」「地理学者」の役で、先生方のすばらしい演技を披露してくれました。


小学生オーケストラ部参加!
2005/03/11
1110517284s

劇中のクライマックスは、『僕は行く』の歌。
ブラスバンド部、オーケストラ部のすばらしい伴奏にあわせて、全校児童、生徒が合唱します。


生徒参加のワークショップ
2005/03/10
1110436145s

 今年卒業する児童6年生、中学生は3年生が参加。後輩に向けて王子、飛行士と一緒に舞台で「僕の旅は続く」を歌います。最初は照れるけど、王子、飛行士と気持ちを合わせて歌う姿は、彼らがここから巣立っていく姿とも重なり感慨深い場面です


全員で作り上げた舞台の記念に
2005/03/08
1110280155s

 桑山小学校公演、終演後、1学年ずつ全校生徒のみなさんと記念撮影。ダゲイさん、マサールさん、コリーヌさんにみんなで「メルシー!」


オリビエ・ダゲイさん四国に到着!!!
2005/03/07
1110199983s

 サン=テグジュペリ作品の著作権相続者であるオリビエ・ダゲイさんは、サン=テグジュペリの妹さんのお孫さんです。10年前に『星の王子さま』を作り続けていく扉を開けてくれたのが、当時著作権相続者代表であったお兄さんのフレデリック・ダゲイさんです。
 21日劇団員の白根有子と、研究生の久保雅信が同行してダゲイさんも四国は香川に到着されました。この日の夜は旅班全員そろって初顔合わせ。出会いと明日の公演を祈って乾杯!
 リハーサルでは、先生方の熱演に笑みあふれるダゲイさんとマサールさん。本番前に「今日、この公演をサンテグジュペリがどこかの星から見守っているでしょう」と挨拶され、あたたかい気持ちとちょっぴり緊張したなかで芝居が始まりました。芝居が進むにつれ客席も緊張がほぐれ、ラストはみんなの声が体育館いっぱいに響き渡りました。全員の思いがきっと王子さまを通して、サンテグジュペリに届いているに違いないと感じています。終演後再会を祈って、互いに熱い握手を交しました。


フランス・ガリマール社、マサールさん『星の王子さま』の旅公演に合流!
2005/03/05
1110026201s

 21日、香川大学教育学部付属坂出小学校にサン=テグジュペリ作品の著作権相続の代理人であるフランスはガリマール社、フレデリック・マサールさんと通訳のコリーヌ・カンタンさんが来日されました。ガリマール社との出会いは10年前に遡ります。前任で今は退職された、ジャクリーン・スーフィーさんとの出会いにより、この作品を再構成していくために演出の浅野もフランスに行き意見交換をしていくなかで交流も生れ、私たちにとってもこの時代の中で、今なぜこの作品を上演していくのか問い返すことにもなったのです。
 昨年2月、再び演出の浅野を始め王子役の東、そして今回花役の柴崎がガリマール社を訪れ、日本の子供たちがどのように見ているか、これまで公演してきた学校の報告をしてきました.そして今回、来日されることになったのです。学校の体育館を使った公演はフランスでもないらしく舞台作りをしているスタッフの動きや、午前中に行なわれたリハーサルにも非常に興味を持って見ていらっしゃいました。本番後、こんなに元気あふれる『星の王子さま』は見たことがないと喜んでいらっしゃいました。
 明日はサン=テグジュペリの遺族であるオリビエ・ダゲイさんが来日されます。


2005冬『星の王子さま』本物の舞台芸術体験事業公演スタート!
2005/03/05
1110020879s

 2月11日『星の王子さま』ツアーメンバー20名がレパートリーシアターを四国へ向けて出発しました。2005年最初の旅公演は、チームも再編成され新たなスタートを切りました。今回の公演は、昨年秋に行なわれた文化庁企画「本物の舞台芸術体験事業」の追加公演として組まれたツアーです。14日を初日に四国、兵庫県で公演します。昨年の秋の公演同様に、参加型の公演です。今回は半分以上が小学校の公演で、風の旅公演では高校での公演が多く、私たちにとっても新鮮で刺激のある公演になっています。
 小学校の公演でまず感じるのは、特に低学年の生徒さんたちは芝居を見て受け止めた感情をストレートに表に出してくるということです。飛行士が描いたスケッチブックの絵を見て「帽子だ!」とか「ゾウが入っている!」とか叫んだりしながら見ています。サン=テグジュペリが『星の王子さま』に残した子供の心というものを小学生の反応によって私たちが気付かされています。飛行士が王子のためにヒツジの絵を描く場面で、王子は飛行士が描いたヒツジをことごとく「だめ、だめ」といって書き直させます。「だめ!」の繰り返しに小学生は大笑いして見ています。このような同じ事の繰り返し、反復は、王子の芝居の中にいくつか出てきます。小学生はこの反復によく反応しています。それぞれの反復を批判したり、面白がったり時には手拍子を入れて盛り上がったりするなかで自分たちで王子の世界を作っていくのです。彼らは芝居を見ながらいつも一生懸命です。生徒さんたちの中に『星の王子さま』がどのように記憶に残っていくでしょうか。一回一回の公演で風を吹かせたいと新たに感じています。


本番前の打ち合わせ
2005/02/24
1110358084s

公演を成功させるため、本番前に先生や生徒と念入りに打ち合わせをします。
写真は舞台監督長谷川と児童代表とのカーテンコールの打ち合わせ中。


『ヘレン・ケラー』秋のツアー終了。
2005/01/25
1106649986s

日向市を出て旅班は再び鹿児島へ。翌10日は宮之城農業高校での公演。先生から「ご迷惑をおかけするかもしれませんが、とてもいい子たちですので……。」と引き渡された福祉課の生徒さんたちとの座談会は、楽しい時間でした。『ヘレン・ケラー』の作品のなかに含まれるたくさんのテーマは、ひとつ取り出しても話が尽きません。皆さんの体験を聴きながら、単純なことだけれど「あきらめない」ってやっぱり難しい。でも喜んでいる姿を見るのってやっぱり嬉しい。若い感覚は単純なことにこそ価値を見つけてくれるのかもしれません。
翌日は、またまた温泉で鋭気を養ってしまう旅班^^。鋭気をいっぱい養って、旅班は奄美大島へ。
やっぱり、奄美はあたたかい!約10時間フェリーでゆられて到着した奄美大島は春の陽気。12月14日、私たちは奄美文化センターにて大島高校、奄美高校2つの学校の公演を行ないました。
地元のケーブルTVの撮影のため少し緊張気味の生徒さんたちと午後、奄美高校の公演後の座談会。生徒会長さん、副会長さんはじめ集まってくれた皆さんは、最初は撮影に照れながらも、話を聞く態度は序々に真剣な眼差しに。その後送っていただいた放映されたビデオでは約7・8分に及ぶ放送時間で、公演前の生徒さんたちの様子から座談会までが放映されている様子を懐かしく皆で見ました。
いよいよ残すところあと2ステージとなった『ヘレン・ケラー』の旅。
最後の会館公演となった鹿屋市文化会館では、鹿屋農業高校の公演が行なわれました。公演後「やって良かった」と楽屋を訪ねてくれた先生たち。ここから、また新しく先生たちとのつながりが始まっていくのだと強く感じました。生徒さんからは、皆さんが作った“豚味噌の缶詰”いただきました!とても美味しかったです!
秋のツアー最後の公演となったのは、阿久根高校での体育館公演。役者それぞれが今旅、そしてこれまでの時間、これからの時間を感じながらラストステージを迎え、また新しい課題と想いが生まれることを願って向かった公演でした。阿久根高校は高台にあって、海が見渡せる素晴らしい学校でした。旅の最後は旅班全員どうしても想いが強くなってしまうのですが、生徒さんたち、そして先生方もそれぞれに思い出を作ってくれたと願っています。
また私たちは2005年の公演に新たな課題と、夢を持って、レパートリーシアターKAZE出の公演、そして春の学校公演へと向かいます。公演を実現させたいと頑張ってくださった先生方、当日を含めお世話になった方々本当にありがとうございました。

★写真は12月14日奄美高校の生徒さんたちと。


新しい空気を吹き込んで
2005/01/11
1105441885s

いよいよ残すところわずかとなった『ヘレン・ケラー』秋のツアー。長かった旅の終わりに少し寂しさを感じながらも、最後のステージまでもちろん気が抜けない旅班です。
神村学園での公演を終えた旅班に、東京から演出の浅野がふたたび合流。12月6日宮崎学園高校から、8日の野田女子高校(鹿児島県)、9日の日向工業高校(宮崎県)と、今回は長く旅班とともに過ごしました。旅班に浅野が合流する何度かのタイミングは「芝居がおとなしくなっていないか」「やりすぎていないか」ということだけでなく「生徒や先生たちに対して何がそこでつくられているのか」そして「なぜ私たちは学校公演に向かうのか――」様々なことが考えさせられる時間になります。今回旅の終わりに合流した浅野は、『星の王子さま』と『ヘレン・ケラー』2つの旅の感想から、「そのときおもしろい、感動したという生徒たちはいる。でもその子たちを受け入れていく社会は本当に複雑で凶悪なものかも知れない。俳優はその日の芝居に満足するのではなく、もっと広く考え、受けとっていかなければならないことがたくさんあるのだから。」と旅班に残しました。その日の客席の反応に安心してしまう自分にはっとしながら、再び固まった頭に新しい空気を吹き込んで向かう公演。
宮崎学園高校は生徒数約1200人の体育館での観劇でしたが、一番後ろの生徒さんまで感じられるような集中した客席でした。野田女子高校では公演後元気な生徒さんたちとの公演後の座談会。パーシーが女の子だったのに気が付いていたのは半分くらい!?座談会終了後は一緒に確めに行きましたね。日向工業高校は日向市の文化センターでの公演でした。会館の公演では特に生徒さんたちと交流する機会が少ないこともありますが、皆さんどんなふうに見てくれたでしょうか。公演後は、校長先生を含め何人かの先生達が楽屋を訪ねてくれました。

★写真は野田女子高校でパーシー役の稲葉、アニー役の柴崎と座談会に出席してくれた生徒さんたち。


「思い出」となる時間
2005/01/11

11月30日は再び福岡県飯塚市のコスモスコモンで飯塚第一中学校の公演。生徒たちの「思い出」をつくるという、『ヘレン・ケラー』『星の王子さま』の今年の2つの旅のテーマは、「芸術鑑賞会という場で生徒たちの記憶に残っているものはなんだろう」という疑問から生まれてきました。「楽しかった」「何か考えさせられた」という生徒たちにとって、いつかまたそれが思い出された時印象に残っているものは何なのか。飯塚第一中学校では、担当された福田教頭先生が最後まで私たちを見送ってくれました。劇団と先生、学校との共同作業はまだまだたくさんの可能性を秘めているのだと改めて感じました。
12月に入り鹿児島へと移動して、12月3日は吹上高校での公演でした。公演後の座談会は何となく興味があって窓から覗いたり、ちょっと試しに教室へ入ってみたりと生徒たちもラフな雰囲気。「出会いの先の二人の物語がみたい」という声は、何度か聞いたことですが、この公演をきっかけに自伝や映画、さまざまな作品に触れる時間を持ってくれたらいいですね。最終的には先生との座談会になってしまった吹上高校の座談会では「教育」をテーマに芝居と、現場の先生たちと、今生徒たちを見つめていくことについてお互いに刺激となる貴重な時間でした。
翌4日は九州公演では何度も訪れ公演している神村学園での公演。掲示板には「7年前風の芝居を見た卒業生」から神村学園ならではの書き込みが入っています。思い出が自分を振り返り、今の自分を見つめる時間となるとすれば、今年の公演もまた小学生から高校生までのそれぞれの感覚の中に、思い出される場として残ってくれていたらと願います。
長いツアーも残すところあと7ステージとなりました。旅班は宮崎県へ――。


〈生きる〉って、なんだろう
2004/12/28

誰でも自分は大切だし、
精いっぱい大事にするべきで、
誰でも自分は可愛いから、
精いっぱい可愛がってあげるべきだと思います。

するとあるとき、
自分よりも大事に思える「人」や、「事」が生れる瞬間が、あります。
その瞬間に「自分がどうするのか」が、
人生の選択、とやらではないでしょうか。

前橋市創世中等教育学校、羽生第一高校の公演を終えて、
『星の王子さま』秋の旅公演が千秋楽を迎えました。
公演の場、座談会、設営や撤去といった様々な場で
私たちは10代の観客と触れてきました。
たとえば「かんじんなものは目にはみえない、心でみなけれゃね」というキツネの言葉は、この時代においてはものすごいリアリティの薄いものとしてしか存在できません。
しかしなおかつ、そのサンテクスの思いに共感しながら、
引き裂かれていくしかない自分たちの状況に対して、生徒は大きな苛立ちを抱えている。
そんな彼らに対して、演劇とは、どうあるべきなのでしょうか。

〈生きる〉ってなんだろう
10代の沈黙が、悲鳴をあげています。
        
さて、『星の王子さま』は年明け2月、文化庁本物の舞台芸術体験事業で、中国、四国地方での公演、続いて久々の「レパートリーシアターKAZE」での東京公演を予定しています。
詳細はまた、このホームページをチェックしてください!!
皆様、よいお年を☆☆


「疑問を持ち、共感し、考える」客席と舞台の関係。
2004/12/21
1103628288s

11月も下旬となり、寒さも厳しくなってきました。
今週の始まりは、鹿児姶良郡福山町の福山高校からスタート。16日ぶりとなる休日を温泉宿で過ごした旅班は、元気いっぱいの月曜日です。
寒いといってもさすがの鹿児島、穏やかな気候に包まれた体育館での公演。終演後には先生から、「舞台を見つめる生徒さんたちの姿に、日頃観られない新たな一面をみました」と、嬉しい言葉をいただきました。舞台をみる観客、観客をみる舞台、客席のなかでの互いの姿と、たくさんの眼差しの交差する劇場空間。先生方にとって、生徒さんの違った面を発見する場となってくれることは、学校公演の貴重な可能性のひとつです。
九州女子学園高校での公演はやはり、公演を通して、授業とは違った側面から、生徒の心を揺さぶりたい、という先生の熱い心が伺える公演でした。
終演後は、「サリバン先生!」「ヘレン!」「お母さん!」と、気軽に声をかけてくれる生徒さんたちと、楽しい片づけの時。ともに過ごした2時間の舞台が確認され、たくさんの質問にあう時です。
大分に移動して、三重高校は総合文化センター「エイトピア」での公演。地元にあっても、なかなか足を踏み入れる機会の少ない劇場。どんな期待を持ってやってきたか、舞台袖に控えながら、開演前の生徒さんたちの様子に耳を傾けます。終演後には、生徒さんが楽屋を訪ねてくれました。
翌日、同じ三重町の三重農業高校は、体育館に移動しての公演。舞台をみつめる生徒たちの眼差しは、そこで起こる出来事の「立会人」の風情。無我の境地に巻き込まれるではなく、疑問を持ち、共感し、考える、そんな客席と舞台の関係が実感されました。
なぜ旅に出て、若い観客たちとのつくる公演の場に価値を置くのか。客席と舞台にどんな経験の可能性をつくり得ているか。旅の終盤に向かい、あらためて問う週となりました。
★写真は大分県三重農業高校で公演後お手伝いしてくれた生徒さんたち。


旅もいよいよ後半に入り……。その②
2004/12/21
1103628034s

松橋での公演を終え、今週は大分、熊本、福岡と旅は続きます。大分県高田高校の公演では担当の高橋先生が顧問を引き受ける野球部の皆さんが公演前からお手伝いしてくれました。公演前あまり話をすることもなかった生徒さんたちとの関係が、公演後には一歩も二歩も縮まった感じ。「こういう演劇の仕事ってどんな生活なのー!」「大変じゃねー?」と気軽に聞きながらも、やはり将来のことが気になる高校生たち。不案を抱えながらも、やりたいことに飛び込める勇気もなければできない仕事だという演出浅野の助言を受けながら、生徒たちとどう接していけるか考えさせられました。
翌、熊本県の御船高校でもたくさんの生徒さんと接する機会がありました。「みんな張り切ってますから、質問攻めに会いますよ。」という校長先生の言葉を聞きつつの公演後の座談会は生徒会の皆さんと。意外と最初はおとなしかった生徒さんたちも、「人について常に考えていく」演劇と、自分たちが日々の生活で悩んだり、考えたりしている人との関係を、自分たちのなかで繋げながら真剣に話を聞いている姿が印象的でした。
今週最後は福岡県の山田高校で。舞台から感じる生徒さんたちの雰囲気は大人っぽい印象。旅日記を通して1校1校の印象を思い出すと、公演後や、公演前に接した生徒さんの印象が多くなってしまいますが、客席で何かを感じているひとりの人の受け取ったものは、きっとその日の芝居に深くかかわっていると思います。そんなことを思いながら、私たちは2班に分かれ、ひとつはアトリエのある群馬県へ、風アトリエの会との恒例「りんご狩り」へ向かい、もうひと班は翌週の公演のため鹿児島県へ向かいました。
★写真は大分県高田高校、見送ってくれた野球部の皆さん。


「人間が相手ですもの、一生懸命やっていれば、いつかはわかってくれるはずです」
2004/12/16

12月は関東近県での公演。
高校での公演が主です。
高校といっても、近隣の文化会館を借りての公演、学校の講堂を使っての公演などさまざまです。
講堂での設営はしばしば多くの時間を費やします。
たとえば東海大学浦安高校では、4階にある講堂でした。そのときにはボランティアで2人の学生と、1人のアトリエの会のメンバーが助っ人に来てくれました。
でも何もない空間が、演劇空間に変化していく時間を体験することは、なかなか面白いものです。
流した汗が、「空間」へと昇華していくわけです。
それは様々な場所で風の芝居を見てくださった観客の皆さんには、少しお解りでしょう?

黒磯市、富士吉田市と場所を変え、神奈川鶴見女子学園での先生方の熱意には、感じるものがありました。
「一生懸命やっていれば、いつかは通じていくはずです。教育って、こつこつやっていくことです」。
そういって笑える先生は、きっと誰かに、「教育を受けた」記憶を持っているのでしょう。
そのことを伝えていくことは、人がつながっていくということでもあるのだろうと、思いました。
伊勢崎工業高校では、舞台は圧倒的な工業高校エネルギーをまともに受け、飛行士はまさに「戦う飛行士」といった風体でした。
そこに生れた緊張感と、その後の空間のやわらかさは、サンテクスの持ちつづけた時代への警告と愛情を垣間見せられるものでした。

『星の王子さま』ラストステージまであと2公演。
2度とない時間への共有へと眼差しを向けながら・・・・


「風の俳優さんは、演劇だけやっているのですか」
2004/12/14
1102994146s

「演劇だけやっているのですか?」
よく座談会などで生徒に質問されることです。
〈演劇とは別の仕事を持っていたり、バイトをしてるんですか?〉
という意味合いで聞かれているので「演劇だけです」と答えていますが「演劇」とは舞台に立つことだけではありません。
12月4日、東中野のレパートリーシアターKAZEでは『チェーホフと現代 いま、なぜチェーホフなのか』という講演会を開きました。
風が大切なレパートリーとしているロシアの作家チェーホフから、「いま」ということを引き出し、考えてみようという企画で、ロシア文学を研究、翻訳もしておられる水野忠夫氏、松下裕氏を囲み、劇団の芸術監督、浅野佳成の司会で40人の方が集いました。
たとえばこの講演会の企画、実行も風の演劇活動です。
旅公演の最中に、東京の事務所と密に連絡をとり、企画を練り打ち合わせ、チラシを作り・・・・。
「演劇」とは人を、時代を考えること。そこから舞台をつくりだすこと。
そのためのすべての時間、すべてのことだと、思ってみてくれませんか?
中途半端では満足できない〈ALL OR NOTHING〉の世界なのです。

さて星の王子さまの公演は、関東、北関東地区に場所を移します。旅日誌お楽しみに!!

★写真は12月4日の講演会。


旅もいよいよ後半に入り……。
2004/12/03
1102039215s

温泉で密かに鋭気を養った旅班。11月13日は熊本県・菊池農業高校での公演。前日、そして翌日と仕込みが行なわれた体育館には、自分たちの体育館に何が起こるのか興味を持った生徒さんたちが覗きに来ていました。いつも見慣れている体育館が変わっていく様子は面白いですね。私たちも体育館公演では楽しみのひとつです。翌日鹿児島に移動して修学館中学校・高校での公演は、こちらも演劇部の生徒さんからHP《掲示板》に書き込みをもらっています。演劇部の生徒さんとは公演前の搬入作業から仕込み、そして公演後の座談会と一緒に過ごしました。撤去作業にもたくさん生徒さんにお手伝いをいただきました。この日の客席は舞台と会話するように、芝居の進行とともにたくさんの声がかかるのがなかなか面白かったです。
鹿児島から熊本へ、16日は松橋高校の公演。国体などにも使われる学校近くの「ウイング松橋」を会場に行なわれました。この日も朝からの公演の準備には演劇部の生徒さんが参加してくれました。公演中の客席は話をする声も聞こえながら気になるところ、見るところは見るという感じ。公演後演劇部の生徒さんと話しながら、顔を見たり、話をすることがなかった生徒さんたちが、この公演から何を見て、何を持ち帰ってくれたのか。私たちにはもちろん解りきることができないそれぞれの人たちの心の中に、何かの疑問や発見が生まれることを願って、まだまだ旅は続きます。
★写真は松橋高校、撤去作業を手伝ってくれた演劇部の生徒さんたちと一緒に。


ちょっと一息。
2004/11/30
1101742860s

忙しいスケジュールの合間を縫って、旅の中日のお祝いに旅班は温泉&バーベキューのツアーを決行!!
鳥栖中学での公演を終え、翌公演が行われる菊池への移動を少し寄り道して阿蘇の地獄谷温泉へ。今回旅班皆でゆっくり過ごせる機会は初めて。トレーラーハウスを借り切ってのバーベキューでは、旅の座長でアナグノス校長役の柳瀬太一が仕切って、よく遊び、よく食べ、よく話し、久々の休日を楽しみました^^
★写真は翌朝トレーラーハウスでの朝食。役者、スタッフ含めた今回の『ヘレン・ケラー』ツアーメンバーです。


「まだまだ若い君たちに……」先生たちの想い。
2004/11/30
1101742683s

阿蘇高校を後にした旅班は大分県へ。秋のツアーも中盤に差し掛かった今週は、大分県・緒方工業高校での公演から。学校統合のため今年が芸術鑑賞会最後の年になる緒方工業高校では、学校が町の人たちに呼びかけ、小・中学生、一般の方々もたくさん見に来てくれました。文化祭の締めくくりとして上演された『ヘレン・ケラー』。生徒さんたちはどんなふうに感じてくれたでしょうか。終演後、体育館を後にする皆さんの笑顔と手を振る姿に見送られ、旅班はふたたび熊本県へ。
11月8日は熊本高校、翌9日は熊本市民会館で市立必由館高校の公演。「ヘレンが障害者だからかわいそう、かわいそうっていうことじゃないって思ってたんです!私は今回の劇を観てヘレンを取り囲んでいる家族や先生、周りの人たちが変化していくところがとても面白かった。」と公演後興奮の面持ちで語ってくださったのは熊本高校演劇部の岩下先生。「やってよかった。」と言ってくださった言葉が、とても嬉しく心に残っています。「演劇は客席と舞台が一緒につくるものですよね。見る前にこのことは生徒たちに話しておきたかったんです。」と話してくださったのは、必由館高校の演劇鑑賞を担当された西嶋先生。私たちも旅公演を続けていく中で、そのことに気づかされる機会がたくさんありました。
11月10日宮崎県・小林高校、そして今回のツアー初の中学校、佐賀県・鳥栖中学校の公演では、公演後すぐ何人かの生徒さんに風のホームページに感想をいただきました!ありがとう!鳥栖中学校では公演前の校長先生が「まだまだ若い君たちが、演劇を見ることからたくさんのことを学び、考える時間にしてほしい」と話されました。1年に1度、学校によっては3年に1度と行なわれる芸術鑑賞の、わずか2時間のなかにかける先生たちの想いを受け止めながら、生徒たちを見つめる真剣な眼差しと共に何かをつくる可能性がある“芸術鑑賞会”という時間を嬉しく思いました。秋の『ヘレン・ケラー』の公演はここで中日を迎えました。
★写真は鳥栖中学校で公演後の撤去作業を手伝ってくれた生徒さんたち。鳥栖中学校だけでなく、今週もたくさんの生徒さんたちにお手伝いいただきました!ありがとうございました^^


「欠点と悩みを待った人間同士が……」
2004/11/27
1101534958s

11月1日熊本県・玉名市民会館での北稜高校の公演には、この旅が始まって初めて、演出の浅野が東京から見に来ていました。北稜高校での『ヘレン・ケラーひびき合うものたち』の上演は98年に続く2度目。終演後に代表の生徒さんが「ヘレン・ケラーとサリバン先生は本当は奇蹟でも偉人でもなく、欠点や悩みを持った人間同士が出会っていったのだと思いました。」と感想を話してくれました。
翌日2日は芦北高校の体育館公演。客席から芝居を見ていた浅野が校長先生をはじめ先生方と会った時、今回の公演をとても喜んでおられたとのことでした。終演後の撤去作業には生徒会の皆さんが参加してくれました。「じゃあ最後に、生徒会副会長からヘレンさんにお礼のキスを・・・」という担当の奥田先生の冗談に照れながら、白根が記念の色紙を贈呈しました。夜皆で集まって、この2ステージを見た演出とゆっくり話ができました。チームのメンバーがお互いの特色や、やりたいことに関心を持ちながら、これからの旅を創っていきたいと思いました。
4日の佐賀県杵島商業高校の公演では、最後に劇団のバスが学校を出るとき、片づけを手伝ってくれた男の子たちが校歌や応援歌を歌って見送ってくれたのが印象的でした。その日のうちに熊本県の阿蘇高校で公演の準備をしました。翌日の本番の朝は、九州といえどもとても寒くてビックリ!とにかく走って身体を温め、開演。1、2幕を通して変わっていった生徒さんたちの反応を見て、「生徒たちの真剣な姿に驚きました。」と、終演後に若い先生方が高揚した様子で話しかけてくれました。片づけを手伝った生徒さん達とトラックの周りで話しているときには、朝の寒さはすっかり忘れていました。
★写真は佐賀県杵島商業高校で片付けを手伝ってくれた生徒さん達と……。


「目に見えたって、大切なものあるよ!!」
2004/11/26
1101482875s

文化庁公演も3週目は土佐中村市東山小学校からのスタート。休日にもかかわらず先生とPTAの方々が搬入を手伝ってくださいました。
〈文化庁本物の舞台芸術体験事業〉も浸透してきたせいか、学校の期待感も年々高まり、先生方のなかに「今、何を生徒たちにつくってあげられるのか」を軸として取り組みが創られてきていることが感じられます。それだけ劇団の責任もとわれつつあるといえます。
南国土佐を後にして、兵庫県播磨町蓮池小学校の公演で考えさせられたのは、「大切なものはめにはみえない」という、キツネが王子に贈る言葉に対して、「えー!! 目に見えるけど大切なもの、あるよ!!」という1年生の突っ込み。
サンテクスは、人間が失いつつある「大切なもの」のゆくえを問い掛けます。それが「ある」のか「ない」のか。
大切なものの行方を知っている世代は、成長という時間の中でいつ、その行方を見失ってしまうのでしょうか。自分たちにもそのことを考えさせてくれる、若い観客たちとの公演の空間です。
子どもたちとサンテクスと、大人たち。
その三角形の中で私たちはたくさんの時代の断面を見せられた気がします。
淡路島の生穂第一、第二小学校、生穂保育園での公演で千秋楽を迎えた文化庁公演。俳優も頑張り、スタッフもふれあい、観客も燃えました。
生穂第一小学校での撤収を終えた後、俳優、スタッフ全員の一本締めで今回の文化庁公演の成功を喜びました。
サン=テグジュペリの投げかける時代への問いかけは、次に作られる劇場空間へと引きつがれていきます。

★写真は生穂第一小学校。開演前の照明ワークショップで。


「本物の舞台芸術体験事業」PARTⅡ
2004/11/25
1101312658s

 香川県・塩江温泉で(ここの温泉はかなりおすすめです)一日温泉につかりゆっくり休んで体調を整え、次の公演地徳島・藍住西小学校へ向かいました。小学校ではお母さんたちが搬入を手伝ってくださいました。今回の公演では小学校、中学校、高校とあり、成長が著しく変わっていく年齢、芝居の受け取り方、表現のされ方も違います。見るもの聞くもの好奇心旺盛で、ストレートに思ったことが表現される小学生。ここ藍住西小学校でも元気いっぱいの客席でした。自分たちでノリを作り出す連帯感、そのパワーには圧倒されます。参加できる喜びと、この芝居を待っていてくれてるなという感じがとてもよく伝わってきました。カーテンコールでは6年生が、藍の種を蒔き、自分たちで育て染め上げたハンカチをたくさんいただきました。毎日みんな愛用しています。毎日盛り上がるなか、その一方でなぜサンテクスがこの作品を書いたのか、なぜ王子は出現したのか、それぞれ振り返りながら毎日違う客席と向かい合っています。
 再び香川に戻り、香川中央高校では、演劇部の皆さんと吹奏楽部の皆さんが参加しました。1000人ぎっしり入った体育館で、とても真剣に見てくれました。リハーサルの時には放送部員の貴岡君が音響担当・橘川について午前中ずっと舞台や音響の説明を受けていました。この公演では見学するクラスなどもあり、生徒の皆さんに本番だけでなく舞台裏の仕組みも楽しんで芝居に興味を持ってほしいとスタッフも気合が入ります。撤去の時も大会を前にして「技術面だけでなく、人と関わり合うこと、準備や片付けの中で多くのことを感じてほしい、大切なことなんだ」と働きかけてくれた放送部の先生。体育館でだからこそ様々な人の顔が見え、関わりが生れる。その中で自分たちがどういう芝居を創っていくか私たちにとっても大事な時間です。
 高知・朝倉第二小学校も1000人くらいの規模が大きい学校で、とても賑やかな(?)客席で、芝居を見ながら感想を言い合っているのです。ひとつの場面でも本当にいろいろなところを見ています。自分たちなりに芝居を通して社会を見ているのです。そして疑問や批評、意見も生れてくるのです。参加する場面では、芝居のタイミングをきちんと取っていて、王子をしっかり捉えていました。その才能、感性には全く驚かされます。「おーい!おーい!どこへ行ってしまったんだよ」掛け声は波のようにうねり、1000人の声が体育館にはちきれんばかり、圧巻でした。終演後「このパワーにおまえら負けるなよ!」と演出の浅野が一言。その興奮はやまず、撤去中の体育館の前は大サイン大会となりました。みんな、今日の出来事忘れないでよー。
 このあともどんな出会いがあるか楽しみです。
 
★写真は徳島県藍住西小学校での「ぼくの旅は続く」のリハーサルで!!


「本物の舞台芸術体験事業」はじまる!
2004/11/21
1100975737s

 西条北中学校の公演が午前中に終わり、休む間もなくいよいよ明日から始まる文化庁企画「本物の舞台芸術体験事業」公演地へと移動してゆきます。今回は四国、兵庫での公演です。                     この企画の公演は、私たちが行なっている学校公演とはまた違った独特な雰囲気があり、賑やかさ、盛り上がりがあります。演出の浅野をはじめツアーメンバーもスタッフが増員され昨日から合流しました。本番当日は参加される先生や生徒さんたちのリハーサルもあるので、前日のうちに舞台設営に入ります。移動して学校に着くと先生やPTAの方たちが待っていてくださり、私たちと一緒に道具を運んだり時には仕込みに参加してくださったり、夜食を用意していただいたり、スムーズに舞台の仕込みができました。また撤去作業にも手伝っていただき本当にありがとうございました。そして皆さんのご尽力のもと生徒の皆さんと先生方がこの芝居に参加することが私たちにとっても一番の楽しみなのです。 
今回も星の住人や地理学者で先生方に出演していただきました。先生方の演技には圧倒されます。そして何よりも先生が舞台に立たれている時の生徒の皆さんの反応がとても楽しそうで舞台袖にかえるときの大きな拍手が印象的でした。普段は見れない先生の一面が見えたり、一生懸命な姿は生徒の皆さんにとっても嬉しいことなのだと思います。そして、生徒の皆さんの参加は私たちにとっても非常に刺激的でした。王子がいろんな星をめぐった後、地球に行くことを決心する場面で歌う「ぼくの旅は続く」、クライマックスで王子が地球から自分の星へ帰る特に歌う「ぼくは行く」、王子がいなくなった後にかけるセリフ、カーテンコールで歌う「光と影」、吹奏楽部やオーケストラ部の演奏。学校によって参加のされ方は様々ですが、稽古のときは違う集中力で、体育館がすべて舞台空間となり、みんなが歌う声やかけ声には鳥肌が立ちました。
芝居を見ようとする行為が生まれ触発され全員で創った舞台でみんな本当に素敵でした。私たちにとっても忘れられない時間となりました。皆さんからたくさんのパワーをもらって、私たちもそれを返していけるよう、芝居を見ている人の何が揺さぶられ、声を発するところまでつながるのか見逃さないで一回一回の舞台に立ちたいと思います。
★写真は四国中央市川之江北中学校。「僕は行く」を演奏するブラスバンド部の皆さん。


それぞれの体育館公演。
2004/11/18
1100743441s

鹿児島中央高校の公演後、夕方の“桜島フェリー”で桜島港へ渡り、バスで島を半周し景色を楽しみながら、鹿屋市へ移動しました。
10月29日は鹿屋工業高校の公演でした。午前中の準備の時から、体育の授業などで外へ出てきた生徒さんたちが体育館の様子を覗きにきていました。この日は舞台の裏にある学校のステージ上を出演者・スタッフの楽屋にしていたので、公演が始まってからも幕間の休憩に男子生徒が数人舞台袖に来て、「おもしろかったです!」と出演者に声をかけてくれました。また芝居の中でヘレンが舞台前面に歩いていく場面で、最前列の男の子たちが「ヘレンつかまえろ!」と言っているのが聞こえて白根はちょっとドキドキしたそうですが、手を伸ばせば触れられる距離で芝居を創る体育館公演ならではのおもしろさを感じました。
翌日は熊本県の球磨工業高校の公演でしたが、朝の9時10分開演なので舞台の設営は前日の夜に行ないました。夜中の12時過ぎまでかかりましたが、劇団員に混じって道具を運んでくれた先生もいました。また行事の担当をしている蓑田先生は、劇団創立当時から風のことをよく知っているので、公演の日をとても楽しみに待っていてくれました。特にアニー・サリバン役の柴崎とは久しぶりの再会で話が尽きないようでした。焼酎の差し入れもいただきました。おいしかったです!
公演本番の朝は生憎の雨でしたが、雨の音にも負けず舞台を見つめる眼差しを感じました。片づけを手伝ってくれた皆さん、ありがとう!
10月31日は菊池高校の文化祭のなかでの公演。風の上演は初めての学校です。体育館に入るとハロウィンのかぼちゃや大きな人形が飾ってありました。ハロウィンのおばけとケラー家の取り合わせは妙でしたが、今までにないおもしろい空間の中で公演が行なわれ、カーテンコールでは生徒さんたちの声が飛び交い盛り上がりました。終演後の座談会には演劇部の皆さんが参加し、ホームページにも部員の古庄君から書き込みが入っています。ありがとう!楽しい文化祭の中、舞台の片付けに協力してくれた皆さんもありがとう。バザーでは劇団員も買い物しましたよ。
それぞれの学校の日常と非日常の間に何を創れるか、高校生のどんな姿を発見できるか、学校公演の楽しみです。
★写真は桜島へ移動する『ヘレン・ケラー』のメンバー。


「自分にとって劇って何ですか?」
2004/11/14
1100437905s

都城市での公演を終え、一日の休日を挟んで始まった今週は、延岡総合文化センターで延岡高校、延岡西高校、延岡東高校、そして延岡商業高校の合同公演。午前と午後2回に分けての公演はほとんど満席の状態。毎回演劇の鑑賞を合同で行なっている延岡市では、風の作品を『Touch』そして現在もツアー真っ最中の『星の王子さま』を含めて何度も見てもらっています。『ヘレン・ケラー』も2度目の公演となりました。午前午後ともに元気な生徒さんたちの笑い声や視線を感じながら、ひとりひとりの生徒さんたちに何が伝わっていくのか、考えさせられる公演となりました。午後は公演終了後、1年生たった2人で演劇部をつくった生徒さんたちとお話しました。「やりたい」と思う動機はいつになっても大事なものですよね。
翌日は都城へ再び戻って都城泉ヶ丘高校での公演。今回ヘレンの父ケラー役でツアーをまわっている酒井宗親の母校公演でした。泉ヶ丘高校では3年前『星の王子さま』も上演。3年生はその公演も観ていて、公演後の挨拶では「へび、へび!」と声がかかり、3年前の出会いを思い出してくれたようでした。
旅班は一路熊本へ。10月27日は熊本市民会館で熊本第二高校の公演。公演後座談会に行ったら、たくさんの生徒さんたちが集まっていてくれました。「会ってみたかった」と言ってくれるのは私たちも嬉しいです。公演後に再び生徒さんに出会える時間は、わたしたちもとっても嬉しい時間です。翌日の鹿児島中央高校での公演でも公演後生徒さん達が待っていてくれました。座談会の最後には「2人にとって劇って何ですか。」という質問がありました。様々なものに出会い、自分のふがいなさに絶えずぶつかりながら、人について、時代や社会について考えさせられる芝居は、私は自分ととても密接な関係のもの。サリバン役の柴崎さんは人生そのものということです。たくさんの語り尽くせない出会いを重ねながら『ヘレン』の旅はまだまだ始まったばかりです。
★写真は都城泉ヶ丘高校、公演後撤去作業を手伝ってくれた生徒さんたちとバッチグーのポーズで^^。


3週間目の『星の王子さま』
2004/11/14
1100430479s

旅公演も三週間目に入りました。
日本では台風や地震といった災害が続くなかでしたが、公演は順調に続けられています。
11月1日は富山県の新川高校での公演。以前『Touch~孤独から愛へ』を上演した学校でもあります。その時は会館での上演だったのですが、今回は体育館。生徒のみんなが体育館に入場し、そこに設営された大きな舞台を見て、期待が盛り上がるなかでの開演でした。終演後もたくさんの生徒さんたちが残り、舞台道具の搬出を手伝ってくれました。ほんとにお世話になりました。体育館の公演は7日の愛媛県・西条北中学校もそうなのですが、校内で生徒さんたちと一緒の時間が長いのでいろいろな交流の時間が持てることが私たちを元気にしてくれます。休み時間に覗きにきてくれる生徒さんや、舞台ができあがっていくなか、たくさんの人たちが協力し合って仕事を進めていく感動を共有できたり、終演後感想を話しながらの後片付け。そういった時間は舞台を観た後の感触をふりかえる時間ともなります。
来週からいよいよ文化庁企画『本物の舞台芸術体験事業』、生徒参加型の公演です。全てが体育館での公演で、どんな出会いが待っているのか。私たちにとってもおおいに楽しみな公演となりそうです。
★写真は新川高校です。


再び九州公演で。
2004/11/09
1099965167s

10月17日16:00、レパートリーシアターKAZEにて『肝っ玉おっ母とその子供たち』終演。『ヘレン・ケラー』公演メンバーは、劇場ロビーに残る観客の皆さんと劇団員に見送られ、19:00羽田発の飛行機で博多向かった。博多からバスで島原に到着。今週は長崎、福岡、宮崎での公演。
18日朝7:00、島原南高校体育館で仕込み開始、13:00開演。300人ほどの客席の視線が、最初から静かな集中力を持って舞台に注がれる。撤去には2年生全員が参加してくれ、わいわいがやがや。体育館公演ならではの交流の時間。翌19日は、福岡県鞍手高校。会場のユメニティおがたには、朝から何人もの先生方が楽屋に詰めて、この一日を熱心にコーディネートしている。
台風23号が近づくなかで、昼頃、翌日の島原高校での公演延期が決まる。旅のメンバーは、翌々日に公演を予定する佐世保に移動を変更。多くの交通機関がストップし、私たちも暴風雨域の佐世保のホテルで、缶詰状態の一日となった。
21日、佐世保西高校公演では、終演後に演劇部の皆さんと座談会。その後生徒数人から、KAZEホームページへの書き込みをもらった。終演後にホームページで、生徒さんたちのメッセージを発見するのは本当に嬉しい!
22日、都城農業高校。座談会は、文化祭で演劇をするという3年生と。撤去の手伝いは、図書委員の生徒さんたち。そして都城出身の酒井宗親が、この学校で教師をしていた同級生と思わぬ再会。にぎやかな公演で週末となり、来週は宮崎県延岡からスタートです。
★写真は、佐世保西高校の座談会。「生徒たちも心を動かされたようです」と、公演後の生徒さんの様子とともに、先生が送ってくださった写真を使わせていただきました。


「また戦争なって人が死んで、いやだし、そんなんむかつくー!!」
2004/11/06
1099737249s

学校公演は授業の一環ですから、下校の時間も決まってきます。でも学校の都合がつく限り、終演後「座談会」を行なっています。
芝居を見た後、演劇部や有志、生徒会の生徒と、出演者とが話し合う会です。
『星の王子さま』の感想、そして舞台機構のことや、なぜ俳優の道を選んだのかなど、舞台を見終わった後の興奮を持ちながら、たくさんの話が生れます。
郡上北高校では、いきなり「自衛隊って徹退すると思う?」「んー・・・先生はまだまだせんと思うが」「でしょー、もー戦争なって人が死んで、いやだし、何でそんなことすんのかむかつくー」ということを皮切りに、なぜサンテクスは大戦中にこの物語を描いたのか。高校生と、戦争と死、そして目に見えないものがなぜ大切だと思うのかを大真面目に語り合っています。
「目に見えんもんは、見えんのだからわからんよ」
「でも気持ちを伝えるとかって、大事違う?」
「なかなかできん事だしね・・・むずかしいよ」
見る、そして語る。
この循環の大切さ。
★写真は郡上北高校での舞台撤去風景


「なんでヘビが足引きずっとるん?」「あれは何かの象徴や!!」
2004/11/06
1099735457s

学校での公演の場合、開演前に先生方から「演劇を見る機会がなく、見方を知らない子供たちなので・・」と言われることがあります。
しかしその分だけその瞬間のリアクションに、感心させられたり、笑わされたり、考えさせられたりすることがずいぶんとあります。
気心の知れた同じ学校の仲間と鑑賞する、という気安さも手伝ってか、友達と批評しながら見る、という鑑賞態度だって生れます。
「なんでヘビが足引きずるん?」「あほ、あれは何かの象徴や。足がないとか、不自由とかとちがうか?」(ヘビの登場で)
「きもちわるーい」「足短い」(・・・・)
「あれはヒツジでなくてヒツギか・・」(箱の絵を見て)
静岡の小山町教育委員会主催公演では、星の住人の一人である点灯夫と、一緒になって「おはよう」「こんばんわ」を繰り返したり、うぬぼれ男の要求する拍手を贈ってくれたりと、身体で楽しみ、身体で感じる公演という印象の強いステージでした。
見る、ということには、まだまだ様々な形がありそうです。


ほしのおうじさまは、たびにでた!!
2004/11/06

1200ステージを越える上演を行なってきた『星の王子さま』。
それでも長いツアーに出る前には、いつも1週間くらいの稽古を組みます。この秋も群馬県月夜野町にあるKAZEのアトリエでキャスト、スタッフそろった中で、演出、浅野佳成による厳しい合宿稽古。〈1ステージ1ステージを大切にして・・・・〉など言うのは安しですが、ほんとうに創っていくには知力・体力・精神力を鍛えねばなりません。舞台とは、観客とは、演劇とは、俳優とは・・・・繰り返し突きつけられ、問われていきます。
そのうえで舞台で観客と〈目ニハ見エナイナニカ〉を創っていける、その場に対するのびやかさ、やわらかさを持ちうるのか。
おおきな「やりたいこと」を抱えて——-ほしのおうじさまは、たびにでた!!


九州上陸②
2004/10/21
1098289307s

宮崎からふたたび北上して14日は長崎県・諫早農業高校体育館での公演。生徒数約1000人という人数にこちらは少し緊張しながらも、生徒さんたちはそれぞれに芝居から何かを感じ取ってくれていたようです。カーテンコールでは「サリバン先生のように僕たちの近くにいるひとを大切にしたい」と生徒会長に言葉をいただき、すてきな花束を2ついただきました。たくさんの生徒さんがお手伝いしてくれた撤去作業の時間も楽しい時間でした。
翌日は宮崎県・宮崎商業高校の公演。こちらもキャパシティ1100人の宮崎県立劇場がいっぱいになるほどの生徒数の多い学校でした。とても静かでしたが時折ぐっと客席全体から存在感のようなものが起こって、ひとりひとりが見ていることがどこかでつながって全体をつくっていることが感じられました。終演後は演劇部の生徒さんたちと「芝居を始めた時のこと」など芝居についての話をしました。
宮崎での公演を終えて、私たちはレパートリーシアターKAZEでの『肝っ玉おっ母とその子供たち』の公演のためその日のうちに東京へ。翌16日、17日は東京で公演です。
★写真は諫早農業高校を後にする私たちを見送ってくれたラグビー部の生徒さんたち。


九州上陸①
2004/10/21
1098289198s

10月10日レパートリーシアターKAZEを出発した旅班はバスで大阪へ。大阪からフェリーに乗り、朝8時福岡県の新門司港へ到着しました。約2時間の移動を経て今秋のツアー初日となった嬉野高校の体育館へ。11日は体育館での仕込みとリハーサルを行い、翌12日本番を迎えました。本番は開演から舞台と客席の間の和やかな空気を感じながら、刻々に出来事が共有されている感じのする時間でした。クライマックスに向かうのでなく、その時々のひとつひとつの出来事に何を見てくれたでしょうか。公演後はたくさんの生徒さんが撤去作業を手伝ってくれました。生徒さんたちの顔を見て、何気なく声をかけてくれる雰囲気から、ホッと初日を終えたことを実感して、旅班は宮崎へと向かいました。
翌日は高鍋町中央公民館で高鍋農業高校の公演。公演後舞台の前で撤去作業をおもしろそうに見ていた男の子たちもつかまえてロビーで座談会。最初照れくさそうにしていた男の子たちが、「舞台はスポーツの団体競技に似ているよね。スター選手がいてもチームでつくることができなければ意味がない」などの話になると真剣に聞いていた顔がとても印象的でした。
★写真は高鍋農業高校公演終了後の座談会で。


2004年秋の学校公演
2004/10/21
1098289080s

10月3日、レパートリーシアターKAZEでのチェーホフ作『かもめ』公演を終え、休むまもなく私たちは群馬県の月夜野町へ。東京では、10月16日・ 17日に公演するブレヒト作『肝っ玉おっ母とその子供たち』の仕込みが行なわれている過密なスケジュールの中、『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』 2004年秋のツアーの稽古が行なわれました。
劇団創立17年目を迎え、拠点劇場レパートリーシアターKAZEを建設して5年目となる今年、風が柱として公演を繰り返してきたチェーホフ、ブレヒト作品で、17年間の私たちの活動を振り返り、これからの演劇的な課題を見つめなおす上演を行い、東京で行なった上演の成果と課題を持って、再び旅公演の稽古は行なわれました。稽古場に臨んで、2月レパートリーシアターKAZEでの東京公演から、それぞれの俳優が様々な経験を経てきたことをあらためて感じました。
この間、10月16日・17日に公演する『肝っ玉』の稽古も行い、10月10日、『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』旅班は初日となる佐賀県・嬉野市へと出発しました。
★写真は旅の初日となった佐賀県・嬉野高校の生徒さん。