旅公演日記
旅公演日記2003夏
星の王子さま Le Petit Prince
中国・関西・関東・東北地方ほか
<キャスト> | |
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王子: | 東珠実 |
飛行士: | 緒方一則 |
ヘビ: | 酒井宗親 |
キツネ: | 工藤順子 |
花: | 柴崎美納/仲村三千代 |
星の住人たち: | 加藤泰斗 栗山友彦 |
★岐阜農林高校から東北地方へ移動、六郷高校、釜石北高校と体育館公演が続きます。普段授業や部活で使っている体育館が舞台装置、照明、音響がセッティングされ、ここでしかない劇場が出来上がります。舞台準備から、体育館がどんなふうになっているのか気になりのぞいている生徒さんや、音響や照明について学びたいと準備の時からオペレーターのそばを離れない演劇部の生徒さん。本番、かたづけまでともにし、スタッフ陣も、生徒さんとのちょっとしたコミュニケーションを何よりも大事にしてゆきたいと考えています。学校の中でだからこそ生まれてくる場。前日のトラックの駐車から、準備など担当の先生方には本当にお世話になりました。
★秋田から新潟そして関東へと旅は東へ西へと横断していきます。
★由利高校の公演は筆者の母校公演でもありました。(卒業時に生まれている生徒さんはいませんが)生徒のみなさんのじっと見つめるまなざし、ほっとゆるんだときの笑い声の中での公演、座談会では、地区大会を目の前にしている真剣な演劇部のみなさんの態度に、自分自身の原点を見たようでした。
★毎年芸術鑑賞行事が実施されている学校もありますが、ジャンルは様々で、久しぶりに行われる学校もあります。
★水戸短期大学附属高校では10年ぶりの鑑賞行事となりました。1000人のホールに満席の客席。ひとつの行事を学校の中で起こしていくには何年もかかりやっと実現されることもあります。先生方の思いと劇団が一緒になってつくっていくこの場は、1回1回今ここでしかない公演なのです。
★この日も、この4月スタッフとして風の研究生になった床井利依の母校でもあり、美術部の部長でもあった彼女に会いたいと、後輩のみなさんが公演後かけつけてくれました。
★新潟・吉田高校も久しぶりに演劇鑑賞が復活したなかでの公演でした。「鑑賞行事に種をまき、耕してくれてありがとうございます」という言葉を先生からいただき私たちも本当にうれしく思っています。
★宮城県・田尻町では文化センター主催の一般公演がありました。ここでは一昨年も『ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち』を上演しています。仙台市内からは電車で約1時間。芝居は都市部だけで行われるわけではありません。ポスターを見て市内から観にいらした方もたくさんいたようです。小さな町で取り組んでいる公演。私たちもその関わりを大事にしてゆきたいと考えています。
★時には見る人の力に支えられ、客席のまなざしから何を感じ、何を持って役者は舞台に立つのか。作品世界だけにとどまらず、どういう空間を一人一人がつくっていくのか、旅公演も中日を過ぎ、旅ミィーテングも開かれました。
★7月に入り、レパートリーシアターKAZEでは、『出口なし』の稽古に入っています。飛行士・緒方もボーイ役で出演のため、東京に戻ってきた日は稽古に参加する。
★旅班は途中アトリエ月夜野で一泊、リフレッシュして終盤の公演へと向かいました。
★一つの公演の中では、担当の先生を始め、まわりの先生方の協力があって成り立っています。交通の便、生徒さんたちの誘導、など公演当日には様々な役割があります。本番は残念ながら観ることが出来なかったという先生たちもいます。
★多くの準備を経て、川越初雁高校の担当の先生も朝から会場に来てくださいました。「舞台と客席がコミュニケーション出来る場をつくりたい」という先生の熱意のなか、本番も舞台と客席がしっかりと交差した時間でした。「生徒の違う側面を見た」という先生。あとかたづけに、自主的に手伝いに来てくれた生徒のみなさんありがとうございました。
★天理高校は『ヘレン・ケラー ひびき合うものたち』も上演した学校。再びの再会を楽しみに天理市へ。
午前1ステージ、午後1ステージの、1日2回公演のため、旅班は前日夜、天理市民会館に入り仕込み(舞台設営のことです)をする。
10時近くまでかかるのだが、担当の先生方も会館に来られ、当日の打ち合わせを行う。
見えないところで先生方も、劇団とともにその日の公演を作り出そうと熱が入る。すべては自分の生徒たちのため。
★大阪・摂津高校は最終学年である3年生だけの鑑賞。500人弱というキャパシティのホールで、330人の生徒の皆さんが鑑賞する。俳優も観客もお互いのコミュニケーションが取りやすい、贅沢な空間だ。その贅沢さの中でこそ、感じられるものもある。
★大阪・建国小学校・中学校・高校はみんな一緒に1ステージでの鑑賞を行った。生徒数は総勢400人ほど。
小学生の爆発的なエネルギーに触発されて、本来ののりの良さに火がついたか、中学、高校生、そして俳優も、思う存分楽しみぬいた2時間でした。
★通常の授業ではなかなか得られないもの、そのことを何とか作り出したいと、先生方は行事に取り組む。
その日の空間が、思い出となって、生徒の中に輝いたり、ある時には支えになったり、そんな「大切なものは目に見えない」ものが生み出せたら。
そんな先生方の努力に、劇団もまた支えられている。
★京都での公演を終えた旅班は、日曜日いっぱいかけて群馬県へ。
体育館公演の下仁田高校は、11tトラックが体育館に横付けすることが出来ないため、入り口まで約30メートル分、通常の搬入よりも距離があることになります。
舞台装置は、トラックに積めるよう、大きいものは分割してありますが、そもそも舞台装置とは大物が多いものです。照明機材だって灯体だけで100灯以上。いつもより撤去には時間がかかりますが、そんなときに手伝ってくれる生徒さんとは、いつにも増して共同という意識がはたらくものです。
ここで〈花〉役の柴崎美納は仲村三千代と交代。
柴崎は次の日から、ビエンナーレKAZE演劇祭の準備とプロデュースのためのネットワークを求めて、ルーマニアへとわたります。
★長野県は高校は地域ごとに固まってひとつの作品を見る鑑賞教室、いわゆる合同鑑賞教室を長いこと続けている県です。
風のホームページ「掲示板」のコーナーを見てくださればわかると思いますが、違う学校に通っていても『星の王子さま』を見た、という共通の体験から、話が生まれたりします。合同鑑賞の面白さのひとつだと思います。
今回公演した長野県岡谷地区、諏訪地区では各校の演劇部を集めて、劇団とのワークショップをくんだり、公演のリーフレットをつくったりと、担当になった先生方は観ることを深めていくための企画を様々に組み込みます。
そういう現場の先生方の思いと行動に支えられた合同鑑賞会。各学校とても元気のよい、舞台とダイレクトにコミュニケートしてきた客席が印象に残りました。
5月24(土)、群馬県・月夜野町にある“アトリエ月夜野演劇工房”から『星の王子さま』の旅班が出発し、初日を迎える岡山県・津山市へ向かいました。
旅班は今週、岡山県に始まって、広島県、島根県そして京都府と公演を続け、31日(土)には京都府にある京都テルサにて一般公演を終えました。
風ホームページには、早速27日広島・日彰館高校の生徒から公演の感想、そして京都テルサでの一般公演の後、台風のさなか公演を見に来てくださった観客の方からも『星の王子さま』公演の感想をいただきました。
今年2003年、レパートリーシアター宣言を打ち出し、レパートリーシアターKAZEの公演として、高校生・中学生に、そして先生方に芝居を通して何が見せられるのか。東京・東中野の劇場では5月30日~『パレードを待ちながら』の公演が行なわれていく中で、また、7月25日~はさらに新作『出口なし』の公演に取り組みながら、同時に東京を出発したレパートリーシアターKAZEの旅班が『星の王子さま』をもって全国公演を続けます。
2003夏『星の王子さま』旅公演日記もご期待ください!!
▼写真は、出発前“月夜野演劇工房”での稽古場より。